パーソナルトレーナーには、国家資格はありません。すなわち、「私はパーソナルトレーナーです」と言ってしまえば、トレーナーの仲間入りです。しかし、トレーナー活動を優位に進めてくには、資格が必須となります。なぜなら、フィットネクラブなど採用基準にいくつかのトレーナー資格取得が必要であるからです。また、資格を取得する際は講習を受講し、試験に備えます。その試験に求められるものが、最低限トレーナー活動に必要な知識です。資格取得後はワークショップでさらに知識を深め、トレーナーの人脈を作ることもできます。まず、「何から始めて良いかわからない」という方は、パーソナルトレーナーの民間資格を取得することをお勧めします。今回は知名度が高く、フィットネスクラブなど採用基準にもなっているNSCAを解説して行きます。
NSCAジャパン:https://www.nsca-japan.or.jp/
NSCAとは?
ストレングストレーニングとコンディショニングに関する国際的な教育団体として1978年に設立されました。現在では世界76の国と地域において会員が活動しており、とても大きな団体となります。NSCAは他の多くのスポーツ関連団体と異なり、スポーツパフォーマンスとフィットネスの向上を目的とした、適切なトレーニングとコンディショニングの活用という共通のゴールを目指して活動しています。NSCAの使命は、「科学者とスポーツ現場の指導者との橋渡し」です。トレーニングにおける新しい研究の実用化を目指すことで、トレーニング指導の専門的職業としての発展を促進しています。
NSCAジャパン
特定非営利活動法人NSCAジャパンは、米国に本部をもつNSCAの日本支部です。1991年に設立され、日本におけるストレングストレーニングとコンディショニングの指導者の育成や継続教育、研究に裏付けられた知識の普及を通じて、子どもから高齢者にいたるすべての人々と、アスリートまで指導できるスキルを身に付けられます。米国本部からの情報を活用し共に研究しつつ、日本のスポーツ界のレベル向上を目指して活動しています。
NSCAはアスリートへのトレーニング指導も学べます。フィットネスの現場では、一般の方がほとんどですが、ランニングブームを筆頭にスポーツパフォーマンスの向上を求める方がたくさんおられます。また、スポーツの現場では「テニスをしていると肘が痛む」「ランニングの後半に足が痺れる」など、痛みを訴える方もおられます。ダイエットやボディメイクから、スポーツパフォーマンスの向上、ケガの予防と幅広く対応できることは、トレーナーとして武器になるでしょう。トレーニングにおける最新の情報を得られることも非常に有用です。
認定資格
CSCS (Certified Strength and Conditioning Specialist)
傷害予防とスポーツパフォーマンス向上を目的とした、安全で効果的なトレーニングプログラムを計画・実行するトレーナーを認定する資格です。指導対象は主にアスリート、スポーツチームです。筋力トレーニングの指導だけでなく、施設を運営、管理することも学びます。また、栄養、ドーピング、生活習慣に関する指導なども併せて学びます。さまざまなトレーナーから、医師、フィットネスインストラクター、研究者などがCSCSの資格を取得しています。
NSCA-CPT (NSCA Certified Personal Trainer)
健康と体力のニーズに関して、評価、教育、トレーニングなど全般の指導を行うトレーナーを認定する資格です。指導対象者はアスリートだけでなく、年齢・性別・経験を問わず幅広い層に対してトレーニング指導を行います。そのため、NSCA-CPTはトレーニングの知識に加え、医学的、運動生理学的な専門知識とトレーニングの指導技術が必要となります。パーソナルトレーナーのほか、フィットネスインストラクターやスポーツ指導者、理学療法士、柔道整復師などがNSCA-CPTを取得しています。
資格認定条件
CSCS (Certified Strength and Conditioning Specialist)
1. NSCAジャパン会員であること
2. 学位取得者、または高度専門士の称号の保持者
3. 有効なCPR/AEDの認定者
4. CSCS認定試験 基礎科学セクションに合格
5. CSCS認定試験 実践/応用セクションに合格
NSCA-CPT (NSCA Certified Personal Trainer)
1. NSCAジャパン会員であること
2. 満18歳以上
3. 高等学校卒業者または高等学校卒業程度認定試験合格者
4. CPR/AEDの認定者
5. NSCA-CPT認定試験に合格
CSCS/NSCA-CPTともに、「NSCAジャパン会員であること」「CPR/AEDの認定者」は共通しています。CPR/AEDとは、心肺蘇生法(CPR)と自動体外式除細動器(AED)のことで人命救助のなどに必要な認定です。原則無料で受講でき、消防署や赤十字社(有料)で取得できます。年齢は18歳以上となりますが、CSCSで要求される大学とは、4年生大学または6年生大学です。
資格取得までの主な流れ
紙や鉛筆を用いた試験ではなく、コンピュータベース試験のため、受験者が試験会場や日時を選んで受験できます。テストセンター は全国各地にあるため、地方の方でも受験しやすくなっています。余裕を持ってテストセンターを予約するために、受験希望日の2ヶ月前を目安に出願の手続きを済ませておきます。出願手続きから120日間の受験期間が設定され、この期間に1回受験することができます。
▶︎受験までの流れ
① 出願
② テストセンター予約
③ 受験
▶︎会員登録料(必須)
・正会員:13,200円(個人)
・学生会員:11,000円(大学生/大学院生/専門校学生/高校生/中学生)
▶︎試験結果
試験終了から24時間後から受け取ることができます。
▶︎資格認定の受け取り
試験合格後から1年以内に、各認定の条件を満たすことにより資格認定を受けることができます。資格認定を受けた後、1ヶ月以内に資格認定証が送付されます。
※試験に合格しても資格認定を受けるまでは、「資格認定者」として活動することはできません。
試験について
CSCS
▶︎合格率
48.7%(2018年度)
▶︎試験時間
合計4時間(基礎科学セクションと実践/応用セクション)
▶︎受験料
50,200円
※1セクションのみ受験の場合34,000円
▶︎出題内容
①基礎科学セクション
スコアード問題80問とノンスコアード問題15問
※ノンスコアード問題とは、採点されない問題です。
・エクササイズサイエンス
解剖生理学、バイオメカニクス、トレーニングに対する適応、心理学などが該当範囲となります。アスリートに対して適切なトレーニングプログラムを提供するには、エクササイズサイエンスの理解が必須です。特にアスリートは、ハードなトレーニングが必要となるため、安全で効果的なトレーニング効果を引き出すために、人間の身体そのものについての知識がなければいけません。
・栄養学
トレーニング効果を引き出すためには、栄養面の指導も必須です。食品についての知識に限らず、サプリメントに対する知識も問われます。
②実践・応用セクション
スコアード問題110問とノンスコアード問題15問
・エクササイズテクニック
柔軟性エクササイズやレジスタンストレーニング、プライオメトリック、スピード、アジリティ、有酸素性トレーニングや非伝統的エクササイズ等の適切なテクニックと、それらのエラーテクニックの修正エクササイズが問われます。また、補助方法も試験問題に含まれます。
・プログラムデザイン
選手の健康状態や能力、トレーニング経験とトレーニング目標に基づいて、競技パフォーマンスを最大限に向上させ傷害の危険性を最小限に抑えるためのトレーニングプログラムを計画することがS&Cコーチとして求められます。そのプログラムデザインについて、適切な知識と応用力が身についているかが問われます。
・組織と運営
施設基準とその運営、訴訟問題や法的責任のリスクを最小限に抑えるための方法等について問われます。
・テストと評価
アスリートの競技特性等を考慮した、適切なテストと評価を実施するための知識を理解しているかを問われます。適切なプログラムを提供するために、アスリートの能力評価、またそのプログラムの効果を客観的に判断するために重要です。さまざまなテスト種目を理解し、その結果により適切な評価ができるかがポイントです。
NSCA-CPT
▶︎合格率
75.2%(2018年度)
▶︎試験時間
3時間
▶︎受講料
46,000円
▶︎出題内容
スコアード問題140問とノンスコアード問題15問
・クライアントに対する面談と評価
パーソナルトレーナーが、クライアントとのトレーニング開始前に行うものです。面談の中で、現在の健康評価と体力評価を行う際に必要となる知識が問われます。また、それらの知識の一つとして、栄養学の理解も必要となります。
・エクササイズテクニック
ストレッチ、自重トレーニング、スタビリティ・エクササイズ、レジスタンストレーニング、有酸素性トレーニングなど、さまざまなエクササイズについての適切なテクニックや、それらのエラーテクニックに対する修正エクササイズを理解しているか?を問われます。「なぜそのテクニックが不適切なのか?」という点を理解する前に、身体にかかる物理的な負荷とそのメカニズムも理解しておく必要があります。
・プログラムプランニング
クライアントのニーズに合ったトレーニングプログラムを計画するために必要な知識が問われます。レジスタンストレーニングや有酸素性持久力トレーニング、プライオメトリックトレーニングやスピードトレーニングなどが含まれます。特に健康に問題のないクライアントのみならず、病気を抱えるクライアント、高齢者、アスリート、妊婦、整形外科的疾患を抱えるクライアントなど、幅広い対象者に対して適切なプログラムプランニングを組むための知識を理解しているかが問われます。基礎知識を正しく理解することが、プログラムプランニングを理解するためには重要です。
・安全性、緊急時の手順、法的諸問題
パーソナルトレーナーとして活動するために、安全な施設条件や機器の管理について理解しておくことは必須です。また、法的諸問題についても理解する必要があります。パーソナルトレーナーとして安心して安全に活動していく上で重要です。
NSCAの資格認定試験は、知識を暗記していれば解けるものではなく、知識から実践的なシチュエーションに対する答えを導き出す能力が問われます。NSCAジャパンでは受験するための必須講習は設けておらず、テキストや模擬問題集、WEBコンテンツにて学習することとなります。また、年に一度受験対策講座(関東/関西)を開催しています。自身の状況に合わせて、学習計画を進めていく必要があります。
受験対策講座
両日:NSCA会員18,480円、非会員27,720円
1日:NSCA会員9,240円、非会員13,860円
※2020年度参照
CSCS/NSCA-CPT共に共通の金額です。
・1日目
CSCS:解剖生理学/バイオメカニクス/栄養学/トレーニングに対する適応
NSCA-CPT:解剖生理学/バイオメカニクス/栄養学/トレーニングに対する適応/エクササイズテクニック
・2日目
CSCS:テストと評価/エクササイズテクニック/プログラムデザイン①/プログラムデザイン②/年齢差と性差/リハビリ/リコンディショニング
NSCA-CPT:面談と評価①/面談と評価②/プログラムデザイン/特別なプログラムデザイン①/特別なプログラムデザイン②
受験対策講座は基礎から学習を始める方に推奨できる内容で、受験用教材の各章/分野ごとに担当講師がポイントを解説してくれます。運動から栄養、プログラム作成と網羅的に学べるため、初心者には安心のサポートです。しかし、開催場所が限られていることと定員も設定されているため、速やかに日程調整を行いましょう。
資格更新のために必要な要件
資格取得後は、必要単位の取得、更新料を支払わなければなりません。NSCAは、資格認定日に関わらず一律の期限が決められています。よって、資格認定日によって、取得する単位数や費用が異なります。最長3年で更新し、更新料は最大で9,000円となります。その場合、必要単位は6単位ですが、カンファレンスに2日間参加すれば2単位取得でき、それほど難易度は高くありません。規定のセミナーやCEUクイズに回答することでも単位を取得することもできます。また、会員継続のために別途で、1年ごとに13,200円(正会員)、学生会員の場合11,000円かかります。
資格取得後のスキルアップや交流会
トレーナーデビューを果たし、現場でセッションを行う中でさまざまな課題に直面します。そのために、資格取得後も同協会で開催されるセミナーや交流会を通じてスキルアップを目指します。協会が認めるセミナー等であれば、単位を付与されます。
・ジャパンコーチコース
個々の会員が興味のあるものを学べるように、各コースを独立させた教育プログラムです。実際の指導現場で必要なスキルを身に付けられます。スポーツ障害/ジュニアアスリート/速く走るためのトレーニングなど、細分化されているため目的別に学ぶことができます。
・フォーラム
年に1回、著名な講師を招きトレーニングに関する講座を開催
※2020年度はコロナウイルスの影響により、動画配信となります。
・カンファレンス
年に1回、海外より講師を招き、ハイレベルなトレーニングに関する知識と技能を学べます。
NSCAは認知度の高さ、アスリートから一般の方まで指導ができる、受験のしやすさとトレーナーの入り口に最適です。信頼のおける資格のため、トレーナー、インストラクター、国家資格者と幅広く受講されています。特にアスリート指導に興味のある方はNSCAをお勧めします。また、大学や専門学校など教育機関と連携しているため、パーソナルトレーナーを目指す方はそちらも確認しておくと良いでしょう。
パーソナルトレーナー養成スクールで資格を最短取得
NSCAやNESTAなどパーソナルトレーナー向けの資格を取得するには独学かスクールに通うか、2つの選択肢があります。機能解剖学や運動生理学などの基本知識があれば独学でも合格は目指せる範囲だと思いますが、基本知識に自信のない方は、スクールへ通うことをオススメします。また、スクールに通うことで、基本的な知識はもちろん、実践的な実技(トレーニング指導)を習得できたり、就職支援が受けられたり、卒業生のコミュニティができたりと資格取得以外のメリットがとても多いため、独学の人よりも何かと有利です。
個別指導であれば、最短2ヶ月で取得することもできます。最近では多くのスクールがあり選定が難しいため、ここでは厳選したオススメのスクールを幾つかご紹介します。個別指導なのか集団授業なのか、オンラインに対応しているのか、講師はどんな人なのかなどご自身に合ったスクールを探して、まずは資料請求をしてみてはいかがでしょうか?