パーソナルジムを開業する際に、多く資金が必要です。貯蓄や融資を利用して開業する方が多いのですが、政府が給付してくれる補助金の制度があります。 私や私の生徒はこの補助金を利用し、開業や事業継続に活用してきた経験があります。今回は、パーソナルジムに特化した補助金活用方法について詳しくお伝えしていきます。
パーソナルジムのチラシやホームページは補助金で作れる
パーソナルジムを開業する際には、店舗の内装費・敷金礼金・看板から多くの開業資金がかかります。また、開業当初は売上げが立たないケースも多く、運転資金も必要になります。
そのタイミングで大きなコストがかかり、また費用が読みづらいのがチラシ代やホームページの制作費・管理費です。最近だと、パーソナルジムのチラシやホームページのクオリティーが高く、客層から言っても、デザイン性が高いチラシやホームページが必須だと思います。
実は、チラシやホームページでの販路拡大をする媒体は、返済不要なお金を支給してくれる制度である補助金が使えます。
宝くじのような再現性が低いものではなく、経営計画書、事業計画書が審査対象となり、しっかりした書類作成さえできれば、開業資金調達や事業拡大にもつながるので情報としてしっていれば、助かる方も多いと思います。
補助金の採択で、脱サラから1年でスタジオを開業
私自身は、前職が健康事業とは畑違いの大手警備会社の社員でした。父親も大手の企業から脱サラして、中小企業診断士として独立した経緯があり、私も十数年勤めた警備会社を退職し、1年以内に店舗開業しようと計画していました。
父親から、補助金制度があることを聞いていたので、開業前から補助金を利用して優位に独立したいと考えました。実は日本の起業している人の多くが5年以内に資金繰りが厳しくなり、廃業しています。
私は、脱サラ前からその事実を知っていたので、1年以内に独立開業する為に必要な経営に関する勉強を同時に行っていました。その一つが、資金調達です。
身内や金融機関からの融資を受ける方が多いと思いますが、実は国からの補助金があることを多くの方が知りません。国や地方公共団体が我々経営者に対して、原則、返済不要なお金を支給してくれる補助金制度は、パーソナルジムの開業のきっかけになるかもしれません。もちろん全ての方が申請してもらえる訳ではありません。
私の経験ですが、具体的な事例を紹介していきます。
合計3回の補助金の採択で事業を拡大
私自身が、整体やストレッチなどを施すプライベートスタジオを開業して15年目に突入しています。開業時・事業拡大時・販路拡大と3回に渡り、補助金の採択を受けました。合計の金額で考えると700万円程度の補助金支援を受けて、事業を継続しています。2007年の開業前に、神奈川県のチャレンジショップという制度があり、この際には店舗内装費の3分の2、家賃の補助が1年間の3分の2が補助金で戻ってきました。
無事に開業でき、店舗経営が安定してきた時に法人化し、整体師やパーソナルトレーナー養成のスクール事業を計画。この際にも、750万円以上の資金をかけてホームページや動画を作成しましたが、創業補助金の第2部門で採択され、500万円戻ってきました。
しかし、現在は神奈川県チャレンジショップや創業補助金はなくなってしまったり、採択率が低いと聞きます。
そこで、ご紹介しやすいものが小規模事業者持続化補助金です。弊社は、2018年に小規模事業者持続化補助金も採択されて50万円給付を受けて、経営の売上アップにつながりました。私は75万円程度のチラシのポスティングを業者に依頼し、一度実費で支払いしましたが、3ヶ月後に50万円が補助金で戻ってきました。2020年現在も、この小規模事業者持続化補助金は継続され、1度目の採択は優位になると言われています。しかし、2回目以降も減点はされますが、しっかりした経営や計画書を提出して数回に渡り補助金を利用されている方もいます。
補助金の採択の仕方をコンサルして、生徒も補助金を活用
このような経験から私が主催している整体師・パーソナルトレーナーの養成スクールでは生徒さんにも、補助金の活用方法を指導してきました。そして何人も採択され、売上アップにつながりました。このことから、パーソナルジムをこれから開業したい方にも補助金を活用して頂きたいと思っています。
私がコンサルティングをして行動を起こした方は、経営意欲も高く、事業計画書もしっかり作れる方がほとんどです。
実は、業者に委託して成功報酬で計画書を書いてもらうケースもあるようです。その場合は、ご自身が経営計画も明確になっていないので、せっかくの補助金も上手に利用できないことも多くあると推測できます。
補助金は、利用費用の3分の2や、2分の1など、ある程度は自分が費用を負担するものです。
その為、補助金の採択=成功ではなく、補助金を使ってチラシやホームページなどの媒体を強化し、補助期間が終わっても自分で広告やホームページ運用の強化につながるような経験が大きいと感じています。
補助金の応募に必要な企画書の書き方のコツ
補助金の書き方にはコツがあります。
例えば、パーソナルジムに関して言えば、現在市場はどれくらいか?自分のライバルとの競合性や自社の強み、補助金を利用する資金の活用方法、その後の経営の展望といった流れです。
書類を審査される際に、補助金をどう活用して、事業を拡大できるか?を説明できないと簡単には採択されません。チラシのケースで考えると、どれくらいの費用がかかり、費用対効果がどうあるのか?また新規集客が増えることでどのくらいの売上につながり、雇用につながるか?など、審査員に分かりやすい書類作成が採択されやすいコツだと思います。
また、書類には写真や図なども記入できます。パーソナルトレーニングの業界でない方が審査をするので簡潔に分かりやすく書く必要があります。文字だけよりも、写真を入れることで視覚的にも目立つようになり、見やすくなります。
単に、枚数が多ければ優位になることもないそうです。本当に必要な説明を精査して書ければ、審査員にも響くいい書類作成ができるはずです。
私自身も、商工会議所の会員になり、企画書の作成時のアドバイスを頂いております。商工会議所は、国や自治体がバックアップされている組織で小規模事業者持続化補助金の書類作成で指導が受けられます。私の生徒でも、商工会議所の会員でない人でも、アドバイスを受けて採択された人もいます。
自分で調べて応募したい方でも、小規模事業者持続化補助金で検索すると募集ページがでてきます。応募方法については事務局に電話すれば質問に答えてもらえます。しかし、提出時に必要な書類も多く、ホームページだけだと分かりづらく、計画書を作成する意欲も起きないかもしれません。
自分でも作成はできますが、商工会議所や中小企業支援センターなどの専門員のアドバイスを受けると、応募までの流れはスムーズになるのでお勧めです。
補助金を採択されても上手くいかないケース
一番重要なのは、経営に対してのマインドだと思います。補助金は書類作成や報告書類が多いのが特徴です。それらの書類作成が面倒に感じる方は、補助金の応募もやめた方がいいと思います。例えば、パソコンが苦手でWordが全く使えない状態だと、書類作成ができません。
また、不合格になる可能性もあるので、安易に書いた書類を提出しても採択されないので、作成までの時間の浪費になります。また、採択された後も、その費用をどう活用したらいいのか?資金の運用もスキルが必要です。例えば、チラシやタウン誌に広告を出しても、全く反応がないと補助金で3分の2の費用が戻ってきても、3分の1は自己負担になります。
小規模事業者持続化補助金のケースでは、半年程度の期間の費用が申請後に戻ってきます。50万円の補助金をもらう為には、75万円以上の費用を半年で消化することになります。月で考えると10~15万くらいの広告費用を利用し、元をとっていかないといけません。
そもそも、最初の75万円以上の予算を準備できなければいけないことも条件です。もちろん上限50万円まで申請しなくてもいいのですが、広告運用方法などを経営者から学んでおかないと失敗する方も多いと思います。
ホームページの制作業者やチラシの作成やポスティング業者も自分で依頼することになります。そこで悪徳業者と契約されると、いくら補助金が戻ってくるとしても水の泡になってしまいます。個人的には、補助金で広告運用のテストができることが凄いことだと感じています。開業当初は誰でも広告費をかけることが怖いものです。チラシを1万枚作成し、ポスティングしても1人も新規集客ができない可能性すらあります。
しかし、金額やキャッチコピーを変えたり、キャンペーンを打つことで、必ず新規集客ができるようになります。多くの開業者がこの時期に広告運用が上手く行かず、業者任せにしてしまうと予想以上に赤字になり、広告運用が失敗します。
補助金は、開業当初の自信がない時期にテストすることができるのです。私からのアドバイスとしては、補助金を使ってホームページ制作や広告を選ぶ際にも、できるだけ相見積もりをとったり、リスク分散することです。
私自身が依頼したチラシ業者にも、退去済みのアパートにチラシを配布したり、酷いとチラシをシワができるような状態で投げ込みされたりしていました。また、配布エリアも店舗から離れたところばかり配布され、集客につながりづらい時期もありました。一気に契約するとそのような悪徳業者に貴重な費用をかけるばかりではなく、さらに地域の評判にも影響してしまいます。そうならない為にも、業者選びに細心の注意を払い、交渉力も肝要です。
私の経験でも言えますが、どうしても補助金が採択されると気が大きくなりやすく、業者の口車に乗りやすい精神状態になります。まずは、小さい金額でテストして、反応率を見て、費用を増やしていくことが失敗しないコツです。知り合いや先輩で既にパーソナルジムを経営している方がいましたら、積極的に複数の人になんの媒体が効果があったのか?聞いてみるといいと思います。場合によっては、コンサル費用を払ってでも、集客の指導を受けた方が短期間で広告運用のスキルが身につくこともあります。
チラシやタウン誌などの紙の広告媒体に明るい経営者もいれば、Facebook広告やインスタグラム広告、Google広告などネット広告で新規集客をしているパーソナルジムもあります。指導を受けることに対しても、補助金の費用の中にも計上して、補助金として通れば、自分でテストする無駄な広告費が抑えられる可能性もあります。
広告費は一度効果的なパターンが作れると、その後も何度も広告費の黒字化が再現ができます。
既に開業している人も補助金の応募ができる
今回は、これからパーソナルジムを開業する方向けに記事を書いてきました。
しかし、先に書いたように小規模事業者持続化補助金も複数回採択されるケースもあります。この補助金の書類には前年度の決算書も提出します。つまり、補助金を活用し、売上げアップにつながった会社は、また別の計画を立案することができます。決算書は、安定した経営状況が分かるので、2回目以降の補助金の採択にもつながりやすくなります。
私の経験で考えると整体サロンを開業(神奈川県チャンレンジショップ)→ホームページや動画制作による整体師やパーソナルトレーナースクールへの新事業(創業補助金第2創業部門)→チラシにより販路拡大(小規模事業者持続化補助金)と補助金をいいタイミングで活用させて頂き、多くの失敗と成功の体験を繰り返すことができました。
そのように補助金を活用することで、これからパーソナルジムを開業したいと考えている方から、既にパーソナルジムを経営しており事業を拡大していきたい方まで、リスクを抑えて資金活用ができると感じています。
ある意味では、補助金の採択できるくらいの書類申請ができないと、パーソナルジムの店舗経営もこれからは厳しいのではないか?とさえ思います。これは、補助金だけではなく、金融機関からの資金調達の際にも必要な流れだからです。
「銀行は晴れている時に傘を差し出すが、雨が降っている時には傘を引っ込める」と言われています。つまり無理な経営や、無計画で資金不足の会社には融資が通りません。資金調達には、明確な事業計画を金融機関に説明できなければいけません。融資までの資金調達の流れと補助金の事業計画は類似しているので、融資と併せて補助金も獲得できるといいと思います。
私自身は補助金申請を自分で行ってきましたが、金融機関から「融資とセットで、補助金の書類作成を支援します」と営業を受けたこともあります。最初から知っていれば、もっと早く、労力を最小限に補助金の申請できていたかもしれません。大学で教えている経営は、多くが大企業向けの知識です。個人事業主や中小企業が必要なお金の運用は、経営を開始してから学ぶ方がほとんどだと思います。私は、今でも経営の資金管理については勉強不足を感じています。
そういった背景の中で、補助金の採択までの書類作成や、補助機関の資金の有効な活用、そして事業報告での書類作成は大変ですが、経営自体の見直しや新しい事業への計画など学校教育で学べない経営戦略を千思万考できるいい機会です。もし、補助金の応募をして採択されなかったら?と考えるのではなく、何度か挑戦して見るといいと思います。計画書を他の専門家などに見てもらい、一貫性がある計画書が作れれば、補助金の採択は受けられます。
現在、コロナウイルス感染症の拡大の影響で、政府も様々な補助金を出すタイミングでもあります。常にアンテナを張って、自ら動くことでパーソナルジムや店舗経営の活路を開く可能性もあります。もしこの記事をきっかけに補助金にご興味ある方がいましたら、ネットで検索したり、地域の商工会議所に思い切って問い合わせをしてみて下さい。
パーソナルジムは、これから健康事業として伸びていく可能性があります。しかし、他業種に比べて、新規参入者も多く、玉石混交の業界とも言えます。補助金の活用方法の記事が、これからパーソナルジムを経営する方や、パーソナルジムの経営拡大したい方の一助になれば幸いです。
根本大(Dai Nemoto)
生年月日:1971年7月20日
国際武道大学時代は少林寺拳法部として活動。大手警備会社社員として勤務。
2006年に脱サラ後1年で神奈川県川崎市向ヶ丘遊園・登戸駅に「ねもと整体&ストレッチスタジオ」を開業。パーソナルトレーナーとしても活動し、現在エニタイムフィットネス向ヶ丘遊園店と登戸店でもパーソナルトレーニング指導を行う。慢性的な腰痛肩こりなどの根本的な改善からアスリートパフォーマンス向上まで幅広く対応。 有限会社ディーエスシーエスとして法人化し、整体師やパーソナルトレーナーの現場で使えるテクニックのマンツーマン指導や開業支援コンサルティングとしても活動している。
▼資格
・関節ニュートラル整体普及協会 S Sランク
・健康運動指導士
・全米ストレングス&コンディショニング協会認定(NSCA)ストレングス&コンディショニング スペシャリスト(CSCS)
・NSCAパーソナルトレーナー(CPT)
・特定非営利活動法人 日本SAQ協会認定レベル2インストラクター