パーソナルジムの独立・開業を決めたものの、「何から始めたら良いか分からない。」このようなお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。しかし、明確なスタートからゴールまでのビジョンが描けていなければ、開業後に様々なリスクを招き、悩まされてしまいます。 独立後、スムーズな立ち上げから集客・運営をする為にも是非この記事を読んで、参考にして頂ければ嬉しいです。
1.開業に必要な資格
実は、パーソナルトレーナーになる為に必要な資格は存在しません。つまり、「私は、パーソナルトレーナーになる!」といえば、あなたはその瞬間からパーソナルトレーナーになることができます。開業時も同様、無資格の状態で開業したとしても、法律上なにも問題はありません。ですが資格を取得する事によって、お客様側の立場からすると多少の安心感が生まれるので、気になる方はパーソナルトレーナー専門の資格取得をオススメします。
先程申し上げた通り、パーソナルトレーナーになる為に必要な資格は存在しません。ですが、資格を取得している事により、顧客から信頼される一つの材料になるので、オススメしたい資格をいくつかご紹介させて頂きます。
① NSCA-CPT(NSCA 認定パーソナルトレーナー)
② NESTA-PFT(NESTA 認定パーソナルフィットネストレーナー)
③ JATI-ATI(JATI認定トレーニング指導者資格)
上記の資格は、世界的に見ても非常に有名な資格です。就職などの採用条件として、以上の資格があればかなり優遇されることでしょう。大手フィットネスクラブの採用基準にあたる資格なので、今後のパーソナルトレーナーとしての活動の為にもそれぞれの資格の特徴を理解して、自分に本当に必要な資格なのか見極めていきましょう。
2.パーソナルジムに必要な開業の手続き
開業するにあたって、「テナントを借りる」「個人の自宅やマンションの一室を使う」「貸しスペースを借りる」など、多種多様なやり方がありますが、法人化せずに、パーソナルジムを開業する場合は個人事業になり、あなたは【個人事業主】になります。個人の場合は会社を設立する事に比べて、面倒な手続きはありませんが、税務署へ提出しなければいけない書類があります。それが「個人事業の開廃業等届出書」です。これは、事業を始める人すべての人が提出しなければいけない重要な書類です。
この書類は、自宅を事務所または教室にする場合にも、現住所の所轄の税務署に開業後1ヵ月以内に提出しなければいけません。ちなみに、手続きは非常に簡単で、必要事項を記載して税務署に持っていき、提出するだけの作業です。
開業届は税務署の他に、都道府県税事務所にも個人事業開始申告書を提出する決まりがあります。ただ、実際には年間の所得が 290 万円を超えなければ事業税が発生しないので、この申告書を提出せずに事業を開始する人がかなり多いそうです。
しかし、開業届を提出せずに営業していて後々後悔することになったパーソナルトレーナーは多くいらっしゃいます。例として挙げると、現在も多くの業界に大打撃を与えているコロナ騒動の中で『給付金』『補助金』などの話題は有名かと思います。こちらは、各種届けがないと事業主として認めてもらう事が出来ません。つまり、開業届けを提出しないと、補助金も給付金ももらう事が出来なくなり、手遅れになってしまうケースが多いのです。このようなリスクヘッジの為にも、開業届けを提出する事を強くオススメ致します。
こちらは、必ずしも申請しないといけない内容ではないのですが、独立される方には、非常に有益な情報です。
「小規模事業者補助金」とは、小規模事業者の事業の発展を後押しする為の補助金です。小規模事業者が商工会、商工会議所から支援を受けて、経営企画書を作成し、その計画書に沿った必要経費の補助を行っております。個人事業者には最大50万円が支給され、複数の事業者が共同して行う事業に関しては、最大500万円が支給されます。認定条件などがありますので、詳しくは中小企業庁のホームページを随時チェックするようにしましょう。
3.開業に必要な資金はどれくらい?
もし読者の皆様がパーソナルジムを開業する場合、「設備資金」「運転資金」が必要経費に該当します。
【設備資金】
① 物件取得費
② 工事費用(回線・内装費)
③ トレーニング機器
④ その他備品
【運転資金】
① 家賃
② 水道光熱費
③ 広告費
④ 人件費
マンションの一室などで開業する場合など、形態は様々ではありますが、今回は店舗を賃貸して、パーソナルジムを開業したと想定をします。その場合実際に発生する費用は下記の通りです。
【設備資金】
・物件取得費 1,500,000円~2,000,000円
・工事費用:200,000円~500,000円
・トレーニング機器:1,000,000円
・その他備品:300,000円
設備資金=3,000,000円以上
【運転資金(1ヶ月あたり)】
・家賃:200,000円以上
・水道光熱費:20,000円
・広告費:50,000円~100,000円
・人件費:200,000円以上(一人あたり)
運転資金=500,000円以上
あくまで一例ではありますが、店舗を運営する以上、大きな金額が発生しますので、様々な業者の話を聞いて、必ずあいみつを取るようにしましょう。
開業するにあたって、初月の売上は0と考えていた方が良いでしょう。店舗経営する以上、しっかりとリスク管理をし、最悪の状況を想定して運営すべきです。従って、開業から3ヶ月~半年ほどは売上が無くても問題がないほどの資金が必要です。その為環境によって異なりますが、目標金額を10,000,000円と設定できると良いでしょう。しかし、中々自己資金で10,000,000円を集めるのは簡単ではありません。
そこで、必要になって来るのが「融資」です。融資とは、お金を必要とする者に貸し、資金を融通する事です。ローンやキャッシングも融資に該当します。様々な機関から融資を得る事は可能ですが、独立したてのまだ信用がない状態では、中々融資先を見つけるのは困難です。そこで、独立したての方にオススメな融資先は「日本政策金融公庫」です。
この機関は国が運営している機関で、創業や開業したての方に向けた融資も枠が多く用意されています。金利も銀行融資よりも低く設定されており、低金利で融資を受ける事が可能です。また、国が運営している事でコロナや地震災害などで事業が上手くいかなくなった人への融資があるのも大きな特徴です。
4.主な集客方法
既にフィットネスクラブやパーソナルジムで働かれていた方は、独立した際にお客様がついて来てくれる場合があります。もちろんその場合、働いていたジムでの関係性も問題になる可能性があります。しかし、同時並行で新規顧客の獲得の為の方法を模索する必要があります。今回は、開業したてのトレーナーが行うべき集客方法をご紹介致します。
・SNS集客
新規顧客の獲得の為には、Webを用いた広告は必要不可欠です。Web集客は、HP作成・SEO対策・MEO対策・Instagram・FacebookなどのSNSを活用した広告など多々存在致します。今の時代の一番の主流になる広告といっても過言ではありません。しかし、主流な広告である反面、Web集客のコンサル会社が多く存在しており、なかには詐欺まがいなサービスも実際に存在するので、ご自身がしっかりWeb集客の仕組みを理解して、勉強する必要があります。ですが、効果的に運用すれば低コストでも効果的な集客方法です。
アナログではありますが、パーソナルジムの情報を印刷したチラシを配る事は、オフライン集客の方法の一つです。インターネット上の広告は、競合他社が多い為、自社の広告が埋もれてしまう可能性があります。チラシ配りであれば、その地域に住まれている方々に直接訴求をする事が可能なので、自宅から通いやすい所にあるジムを探している人を呼び込みたい場合に効果的です。
また、住宅地であればポスティングを業者に依頼して、チラシを配布してもらう選択肢もあります。ただし、ポスティングNGのマンションなどもあるので、ジムの周辺の情報を事前に調べておく必要があります。ただし、現在はインターネット広告が主流となっている為、事前に広告に対するリサーチをして、費用対効果をしっかり考えるようにしましょう。
ホームページやブログを用意して定期的に更新する事は、パーソナルジムの集客の一番の基本です。ジムの場所や自社のサービスを紹介する事も可能ですし、初心者にオススメなトレーニングや食事など、有益な情報を発信する事により、ファンを多く付ける事が可能です。無料で情報を教える事を勿体無いと感じる方もいるでしょうが、訪問者の役に立つノウハウを伝える事は信用度アップに大きく貢献してくれます。また、色々なキーワードで検索に表示されやすくなるSEO対策上のメリットもあるので、ぜひ実践してみてください。効果的に運営する事が出来れば、どの広告よりも強い発信力を得る事が可能です。
5.周囲への種まき
私の経験上、数ある集客の方法の中で周囲への種まきが最も効率的な集客方法だと考えています。
周囲への種まきというのは、オフラインの一対一のコミュニケーションの事を指します。広告をだしていればお客様が勝手に入ってくるなどという都合に良い話はありません。相手に何か価値を提供して、ギブしてこそ、自分に興味を持って頂けます。
「店舗に来てさえくれれば…」「一度、自分のセッションを体験してくれれば…」などの待ちの姿勢ではなく、今の自分に何が提供できるのかを考えていきましょう。
全て求めるだけでなく、まずは自分から動いて存在を知ってもらう行動が大切です。
① 事務作業やブログ・SNS作業は、店舗外で行う
個人事業ともなると、どうしてもパソコンの前でにらめっこしている時間が多くなります。ですが、自分の自分の店舗内での作業が多いと他人とコミュニケーションを取る機会が減少してしまいます。なので、店舗近くのカフェなどを探して、そこで作業をするのがオススメです。また、個人店のカフェなどにすれば、オーナーと会話できるチャンスなどもあり、人脈構成には非常に効果的です。
② 近隣の個人店に足を運ぶ
先程申し上げた通り、近隣の個人店に足を運ぶのは非常に効果的です。コンビニやチェーン店の飲食店より、圧倒的にスタッフの方とのコミュニケーションが取れやすく、自分の存在を知って頂けるチャンスにもなります。相手先の商品を購入する事も、相手になにかを与えるという事の一つなので、積極的に足を運ぶと良いですね。
③ 各コミュニティに参加する
異業種交流会などのコミュニティに参加するのも、集客の一つの方法です。異業種交流会のメリットとしては、普段お会いすることのできない別業界の方から生きた情報を収集できるという点と自分のサービスに興味をもって頂けた方が自分のお客様になってくだるという事です。 異業種交流会はその名のとおり、業種・業態が異なる人との接点を多くもつことができます。 日常の業務では知りえない業種の生きた情報を仕入れることが可能になりますので、参加してみるのも一つの手でしょう。
また、同じ業界ではない人からもらうアドバイスはかなり貴重です。違う業界からではこのように見られているのか、など新たな気づきがあるので、そこからまたビジネスのヒントを得られることができます。
いかがでしょうか。
独立して、開業する為には計画性を持って焦らず進めていく事が必要です。一度自分の事業計画書を作成して、誰かに上見して頂くのもいいと思います。ビジネスが継続していけるようにいろんな方の意見を元に、進めていきましょう。是非、参考にして頂けると幸いです。
高月宏和(Hirokazu Takatsuki)
スポーツ系の専門学校を卒業後、J1リーグに所属する静岡の清水エスパルスに入社。一般の方からプロ選手までのトレーニング指導を5年経験したのち、パーソナルトレーナーとして独立。独立から7ヶ月後にパーソナルジム『BodyBrand』を設立。主に一般の方の『美姿勢づくり』『ダイエット』をサポートするパーソナルジムとして定評があり、現在は5名のトレーナーと活動中。