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スポーツ競技経験を活かしたパーソナルトレーナーへの転職

寄稿

2020.05.25

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パーソナルトレーナーの仕事は、現在までフィットネスが主流です。今回は、スポーツ経験を活かしたトレーナーへの参入を考察してみたいと思います。スポーツの経験にトレーナースキルの修得やITスキルなどを掛け合わせることで、スポーツ経験の強みを活かしたトレーナーになれる可能性があります。

スポーツ経験を強みにしたパーソナルトレーナーになろう!

私はパーソナルトレーナーの指導をしておりますが、フィットネス業界を見渡してみると、健康的な生活やダイエットなどのボディーメイクが中心だと感じています。その一方で、私事で恐縮ですが、自分のスポーツ経験を活かして、県立高校や大学の運動部やアスリートのトレーニング指導を行い、スポーツトレーニングの潜在的なニーズも感じております。

フィットネスと競技スポーツというのは、同じ運動でも、共通している部分と全く異なる部分があります。ある一定期間打ち込んできたスポーツ経験者は、スポーツ経験からトレーナーの職業へ興味を持ち続けている方は意外に多いと思います。しかし、現実的には、スポーツ経験を活かしたトレーナーという職業は年収・将来性など不透明なことが多く、スポーツトレーナーで食べていくのは至難の業だと思われているのが現状です。日本ではまだ少ないですが、欧米諸国ではスポーツのトレーニングを専門職として活動している方は多いのです。

潜在的なニーズに比べて、スポーツが仕事になりづらい理由は?

ジュニアスポーツなどの役員をさせて頂いた経験からスポーツ指導者の方々の素晴らしさを常々感じていました。スポーツは勝敗がはっきりします。その点がフィットネスと比べて、シビアな部分です。
栄枯盛衰をものがたる勝者と敗者の明暗を分ける結果が、選手・指導者・保護者の感情の起伏が激しいのも特徴です。
学生時代にスポーツに打ち込み、社会人になると仕事をしながら、地域でスポーツ指導を従事されている方が多いと思います。日本では今までボランティア的に運動指導をされてきた方が多かった歴史があり、なかなか事業化できないスポーツ競技も多いと思います。そのような背景がある為、販路開拓が進まなく、顕在化した需要が多いフィットネスにトレーナーの方々も流れていくのだと思います。


現在のスポーツ界の市場と将来性

日本では、スポーツビジネスの市場規模を現在の5兆円から2025年までに15兆円を目標にしています。アメリカは60兆円と言われており、市場規模が全く違います。しかし、現在コロナ自粛の件で先行き不透明ではありますが、日本でも今までの3倍の市場規模を目標にしているため、可能性が大いにあると推測できます。

これにはオリンピックを含む国際大会、5Gを活用した動画の時代がスポーツのマルチアングル映像配信、高臨場パブリックビューイングなどスポーツの魅力を伝える条件も揃いつつあります。日本の総人口は、これから長期の人口減少過程に入ってくると推計されております。問題になる人口減少社会ですが、都会でスポーツを行う環境がない現在よりは、広いスペースで運動やスポーツが行いやすくなる可能性があります。

アメリカで流行しているサバイバル式のトレーニングは、フィットネスとスポーツの中間的な運動になりますが、倉庫のような空間が必要になります。それが、インターネットで人を集め、アメリカのように競技として盛り上がれば、フィットネスのトレーニングも、より速く走ったり、飛んだり、持ち上げられるようなスポーツ競技に近づきます。運動も今ある価値とは違った形態のものが生まれ、普及する可能性もあり、今はまだ考えつかないような新たなサービスが生まれてくる可能性があります。

中高生の部活でも教員の業務過多やパワハラの問題が社会問題になったりしていました。数年前から、教員の負担を減らしながら、外部指導員制度の話も出てきています。まだまだ普及は時間を有しますが、私も高校のバスケットボール部と年間契約で学校内にて、筋トレ・ストレッチ・敏捷性トレーニング専門のトレーナーとして活動させて頂いております。

フィットネス系のトレーナーとスポーツ系のトレーナーの違い

現在、フィットネスクラブやパーソナルジムで行われているトレーニングは、基礎体力アップや健康・美容が主な目的だと思います。しかし、スポーツ的なトレーニングでは、スピード・パワーがかなりの比率で求められていきます。フィットネスクラブの会員の多くの方が、ランニングを見ても、短距離やジャンプ動作など行っている方はほとんどいません。つまり、フィットネス目的でトレーニングをされている方は、パワーやスピードを意識したトレーニングはしていません。筋力アップとスピードが伴う瞬間的なパワーはイコールではありません。

ですから、パーソナルトレーナーも現在日本の施設では、アスリートの競技能力に直結したトレーニング指導を受けられる場所は限られています。最近ではトップアスリートのトレーニングシーンをSNSなどで見る機会も増えています。『本当に使える体になりたい』と考えるスポーツ選手やスポーツ愛好家のニーズもあり、そうなるとスポーツ系のトレーナーも活躍できる機会が増える可能性があります。

私自身は、フィットネス系の依頼も、スポーツ系の競技能力向上の仕事も、両方担当しております。最近ではアスリートまでとは考えていなくても、ゴルフやテニス、ランニングなどの愛好家も増えてきています。そのような方にも、実はスポーツ系のトレーニング指導ができれば、パーソナルトレーニングを受けたいというニーズもあると思います。一般のスポーツ愛好家が求めるゴルフの飛距離アップやテニスのフットワークを良くすることなどは、これからご紹介するSAQトレーニングのスキルがあれば、難しくありません。

スポーツ系のパーソナルトレーナーになる為にお勧めのセミナーは?

スポーツのスピードに特化したトレーニングとして、SAQトレーニングというメソッドがあります。このトレーニングは「スピード」の三大要素である「Speed(スピード)・Agility(アジリティ)・Quickness(クイックネス)」を如何に高めるか?体系付けられて、日本各地でセミナーも開催されております。

特定非営利活動法人日本SAQ協会主催のセミナーを調べると、4日間のレベル1セミナーがあります。私もこのSAQ協会のインストラクターとして、トレーナーの専門学校で、資格認定セミナー講師や認定試験を行う活動をしてきました。専門学校とは別に、一般の方も対象としたレベル1セミナーも各地で開催されています。4日間、学科と実技を学べ、スポーツ競技能力の向上を目的としたトレーニングが学べます。広く門戸を開かれ、基礎的なトレーニングやスポーツ医学の内容も含まれるので、フィットネス系のパーソナルトレーナーも参加されると、一般のクライアントの動作解析にも応用できる教育が受けられます。

2020年現在1日の受講費も5,000円と、受講しやすい金額で、講師の方のレベルもかなり高いのでお勧めです。4日間の資格取得後に、再度セミナーを受講する際は、半額の2500円で受講できます。インストラクターの方の指導レベルは高く、参加者の方も教育関係・インストラクター・学生・医療従事者・アスリートまで真摯に取り組まれている方が多いと思います。私は、このSAQトレーニングのセミナーを何度もリピートして、現在トレーナーとしての基本スキルを身につけたと言っても過言ではありません。

まだ、未開拓のジュニアアスリートの運動指導者

未来のアスリートを育てるには、神経系の発育発達が著しい10歳前後に多様な運動パターンを体験することが重要だと言われています。特に前述のとおりの遊びの要素が多いスピードトレーニグであるSAQトレーニングは、この時期に有効なトレーニングがプログラムとされております。ここ数年でパーソナルトレーニングの需要は伸びましたが、子供でパーソナルトレーニングを受けているケースは稀だと思います。今後、スポーツビジネスの市場規模が拡大していくことで、ジュニアのパーソナルトレーニングが伸びる可能性もあります。

最近ではスマホの普及で、体を動かさない子が増えており、体力が二極化してきております。そのような一般の子供にも、走り方教室など潜在的なニーズはあります。スマホやゲームばかりで、身体を全く動かさない子供達と、毎日サッカーや野球など運動したり、バレエやダンスを習っていて体を動かしている子供達がいます。

この運動能力が低い子供たちと、毎日運動して将来的にスポーツで活躍したいと思っている子供たちは、パーソナルトレーニングの潜在的なニーズが高いと思います。「運動会で少しでも活躍させたい」「オリンピック選手になりたい」と運動能力の向上への欲求は強いと思います。

これを解決するには、ITスキルや動画マーケティングが活用できます。個人でも、SNSで情報発信することで、仕事を受けたり、自分で開催する教室を創出することも可能な時代です。また既に子供たちが集まっている施設と連携し、運動教室のようなものを行うこともできます。例えば、「陸上の選手に走り方」を指導できる人は少ないかもしれません。しかし、小学生に「かけっこ教室」を開催し、指導できる人は多いと思います。

このように、ご自身のスポーツ競技のキャリアでトップレベルまでいかないと仕事にならないと考えられていますが、実は、小学生のかけっこ教室のレベルでも、指導スキルが高ければ、専門家に見てもらいたいと考える保護者も多いはずです。パーソナルトレーナーと言っても、実はアイディア次第で、自分の経験を仕事に変えることができます。ボディーメイクを指導するだけがパーソナルトレーナーの仕事だと思われているかもしれませんが、様々なところでトレーナーの活躍する場所はかなり多くあります。

一般の方、高齢者にも、スポーツ向けトレーニング指導が活用できる事例

スポーツ選手の指導は、研究者のエビデンスを得ながら、日進月歩しています。こういった情報は一般の方のトレーニング指導でも有益になっています。例えば、女子アスリートは女性にとっての適正体脂肪率など研究がなされ、私達スポーツ系トレーナーにも共有されるようになってきました。一般の方は体重減少だけを見てしまい、健康が保たれているか?を見過ごしているケースが多いと思います。特に女子選手は、体重を気にするあまり、今まで様々な健康上の弊害がある食事制限を行ってきた過去があります。

その為、最近では体重や体脂肪率にとらわれるのではなく、「除脂肪体重(LBM)」に注目した考え方が普及してきています。一般の方も、アスリートの体調管理・トレーニング・コンディショニングに高い関心があるのではないでしょうか?アスリートのトレーニングエラーというのは、怪我をすると半年・1年と長期間、トレーニングができないリスクがあり、間違ったトレーニングの選択は、競技人生を棒に振ることになりかねません。

その細やかさは、実は高齢者にも言えることです。関節の構造を理解できれば、アスリートから高齢者にも安全性が高く、効果的な運動指導ができます。フィットネスクラブでは、有酸素運動としてトレッドミルなどでウォーキングやジョギングをしている方が多いと思います。中高年の方は特に膝や腰に問題を抱えており、そのような方は歩き方や姿勢に問題があるケースがあります。これらの動作を修正するスキルは、アスリートも高齢者も、何ら変わりがありません。

研究者も、アスリートの体力測定やトレーニングの研究までを、NSCAなど教育団体を通して、トレーナーやインストラクターに公開しています。臨床実験で明らかになった最先端のエビデンスを元に、運動・栄養・生活習慣まで指導できれば、一般クライアントにも大きな利益があるトレーニング指導ができると考えられます。

アフターコロナを見据えた取り組み方の方向性

新型コロナウイルス感染症拡大防止から一気にリモートワークが広がりました。そして、我々、パーソナルトレーニングも形態が変わってくると思います。「ビフォーコロナ」と「アフターコロナ」では、世の中のビジネスの仕組みに大きな変化が生まれていくと言われています。

新型コロナウイルスで世界中のスポーツイベントが中止になり、今までの常識が通用しないようになってきています。
今後のことは誰にも見通せない状況ですが、オリンピック選手は、国を背負い戦う姿は、多くの人に感動を与え、熱望されています。世界や日本が、今後新型コロナから復興するのに、スポーツやフィットネスの力は大きいと思います。本来なら記事を書いているこの2020年は、東京五輪・パラリンピック大会で盛り上がっていた年。

コロナさえなければ、これからの5年でスポーツやフィットネスが瞬く間に市場拡大をするタイミングでした。1964年の東京オリンピックは、戦後復興の象徴と言われています。オリンピック史上初めて全世界にテレビ中継された大会でもありました。2021年に予定されている東京オリンピックも、5Gが普及していくので、今の状況と似ているかもしれません。

戦後、オリンピックの盛り上がりが急速な復興だったのは間違えありませんが、アフターコロナでも、また新しいテクノロジーが大きな変化をもたらすタイミングだと思います。今、私達ができることと言えば、トレーナーという仕事で地域の人々の健康に寄与すること。新型コロナの件で医療崩壊の危機も迫っていると連日ニュースになってきています。

そのような中でも、運動を適宜日常生活に取り入れながら、健康的に日々の暮らすことの必要性を痛感されている方も増えてくると思います。運動は、体の側面だけでなく、より広義に医療を補完できる役割ができるはずです。運動後に感じる爽快感や達成感は、新型コロナで不安な私達の健康を維持する上で、ストレスやうつ状態を改善できるようなメンタルヘルスにも良い影響を及ぼします。

当然、スポーツ選手の中でもトップ選手として活躍できるのはほんの一握りです。しかし、若い頃はトップアスリートと自分をシンクロさせて夢や目標を持った時期を過ごしてきた人は大きな財産になっていると思います。スポーツに打ち込み、スポーツでしか経験できないことを活かせる仕事の紹介として、この記事が一助となることを願っています。

▼ライター
根本大(Dai Nemoto)
生年月日:1971年7月20日
国際武道大学時代は少林寺拳法部として活動。大手警備会社社員として勤務。
2006年に脱サラ後1年で神奈川県川崎市向ヶ丘遊園・登戸駅に「ねもと整体&ストレッチスタジオ」を開業。パーソナルトレーナーとしても活動し、現在エニタイムフィットネス向ヶ丘遊園店と登戸店でもパーソナルトレーニング指導を行う。慢性的な腰痛肩こりなどの根本的な改善からアスリートパフォーマンス向上まで幅広く対応。 有限会社ディーエスシーエスとして法人化し、整体師やパーソナルトレーナーの現場で使えるテクニックのマンツーマン指導や開業支援コンサルティングとしても活動している。
▼資格
・関節ニュートラル整体普及協会 S Sランク
・健康運動指導士
・全米ストレングス&コンディショニング協会認定(NSCA)ストレングス&コンディショニング スペシャリスト(CSCS)

・NSCAパーソナルトレーナー(CPT)
・特定非営利活動法人 日本SAQ協会認定レベル2インストラクター

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