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【スポーツトレーナーは知っておくべき!】部位別の外傷と治療法(下肢編)

寄稿

2021.12.07

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前回の上肢編の記事、ご覧になっていただけましたでしょうか。かなり難しく、漢字が多い内容だったと思いますが、今回は下半身の怪我を見ていこうと思います。「上半身の怪我と、下半身の怪我、どちらの方が重要で知っておいた方がいいですか?」という質問がたまにきますが、声を大にして言いたいことは、どちらも重要です!上半身だけ知っておいて、下半身はあまり知らない。これでは意味が無くなってしまいますので、両方とも最低限の外傷は必ず理解しておきましょう。 まず、こちらの下肢編の記事から読み始めた方もいると思うので、そもそも外傷とは何なのかを簡単に説明させていただこうかと思います。

1.そもそも外傷とは?

前回もお伝えした内容ですが、改めてお話します。外傷とは転倒・衝突などの1回の外力によって組織が損傷されることです。一般的な言葉でいえばケガに当たります。外力には直接的な外力と間接的な外力の2つがあります。

最近は、相手との接触などによる接触性外傷と着地や切り返しのときなどに体のバランスを崩すことによって生じる非接触性外傷を分ける考え方が一般的になっています。非接触性外傷の代表的な疾患としてはアキレス腱断裂・肉ばなれ・膝前十字靭帯損傷などが挙げられます。

外傷の分類には創の状態での開放創か非開放創かの分類、外力の種類により機械的損傷か、物理的損傷か、科学的損傷の分類や部位によって頭部外傷・体幹の外傷・四肢外傷の分類などがあります。特に開放創がある場合には二次的感染に注意しなくてはなりません。

また、外傷は損傷される組織や程度によって打撲・創傷・骨折・脱臼・捻挫・肉ばなれ・腱断裂・神経損傷・血管損傷などに分けられます。特殊なものとして脳震盪や内臓破裂などがあります。

次に外傷の症状についてです。

局所的なものと全身的なものに分けられます。局所的なものの症状としては出血・疼痛・熱感・腫脹・変形などがあります。理学的所見としては疼痛部を中心とした圧痛・感覚障害・筋力低下・異常可動性などが挙げられます。

一方、全身的なものとしては疼痛・精神的動揺による一次性ショック、出血や体液喪失による二次的ショックがあります。意識消失を伴うこともありますから、注意が必要です。

また外傷に伴う合併症として感染・ショック・呼吸障害・腎障害・神経麻痺などがあります。外傷は初期治療とその後の適切なリハビリテーションがとても重要になってきます。この適切な治療ができるかどうかで復帰までの月日が大きく変わってきたり、後遺障害を生じることもあるのです。

ここまでは前回も紹介していきました。上肢と下肢のどちらから読んでいただいてもOKですので、興味のある方から読んでいただけたらと思います。

今回は下肢編です。

2.大腿四頭筋肉ばなれ
とは何でしょう?

肉ばなれとは、スポーツ動作中に競技者が受けた経験によってつけられた呼び名です。急に筋肉が切れたように感じるとともに、脱力や痛みを伴う状態といっています。皆さんも一度は聞いたことがある怪我の一つでしょうし、実際に経験した人、肉ばなれを起こした人を見たことがあるかもしれませんね。肉ばなれは打撲などの外力による筋挫傷とは異なり、自らの筋力または介逹外力によって抵抗下に筋が過伸展されて発症すると言われています。

一般的に筋のモデルとして考えやすいのは紡錘状筋ですが、実際に受傷する筋の多くは羽状筋です。肉ばなれの多くはこの羽状筋がいわゆる遠心性収縮によって筋腱移行部で受傷します。大腿四頭筋の中で大腿直筋が二関節をまたがる筋なので最も受傷しやすくなっています。そもそも大腿四頭筋は4つの筋肉から成り立つ太ももの前の筋肉で、大腿直筋はその4つの中で真ん中にある筋肉です。

この部位は、股関節伸展位で膝が屈曲位のときに最も受傷しやすいです。というのも、最も張力が強い肢位だからという理由があります。この肢位は、走行中に後方に蹴りだした脚を前方に振り上げる切り返しの動きになります。

実際の治療は、肉ばなれの重症度によって変わります。初期治療はRICE処置を行います。荷重歩行の制限や圧迫、挙上と冷却は筋肉の出血や腫脹の量を減らすのに大いに期待ができます。一番最初にやるべきで、効果的な方法です。リハビリテーション期には可動域訓練や温熱療法、ストレッチなどを行います。I度の肉ばなれの場合は1・2週、II度の場合は3〜6週で復帰が可能です。

スポーツをする場合、期間で対応するだけでなく、種目によって条件を確認した方が良いでしょう。Ⅲ度の場合、稀ですが手術になる可能性があります。術後のリハビリテーションは原則として中等度の肉ばなれに準じて行います。

再発予防は初めての受傷の後に重要になります。予防戦略の一つとして筋の持久力トレーニングがあります。疲労した筋は肉ばなれを起こしやすいからです。また、運動前のストレッチやウォーミングアップも大切です。

肉ばなれは気候にもかなり影響されます。寒い時期に筋肉がかたまった状態で急な運動すると、筋肉が収縮と伸縮の負荷に耐えきれず肉ばなれを起こしてしまいやすくなってしまいます。そういったことも防ぐために、やはりウォーミングアップは必要になってきますね。

3.膝前十字靭帯(ACL)損傷
について

ACLは前内側繊維束と後外側繊維束に区別され、脛骨の前方不安定性だけでなく、下腿内旋や過伸展も制御しています。急激なストップやジャンプなどの動作では、大腿四頭筋が急激に収縮しています。

大腿四頭筋の分力により脛骨が前方に引き出されるため、ACLは重要な機能を果たしています。いったん損傷されたACLは吸収されたり、正常とは異なった部位に付着したりして、前方方向への不安定性が残って脛骨が前方に亜脱臼する膝崩れが繰り返される場合が多いです。これによって半月板の後節部にストレスが加わってこの部位の合併損傷をきたしやすくなります。

受傷機転としては、外力が直接膝関節加わり断裂する接触型と大腿四頭筋が急激に収縮する動作や膝にひねりが加わる動作により断裂する非接触型があります。

ACLは通常1ヶ月程度で普通の生活に戻りますが、合併半月板損傷によって嵌頓をきたす場合があり、その場合には関節可動域の制限や疼痛が続きます。

治療の流れとしては、受傷直後は疼痛や腫脹を軽減する目的でRICE処置を行います。ACLにつきましても、やはり処置はRICE処置ですね。一般的によく行われるギプス固定を長期間行うと、関節軟骨への悪影響や関節拘縮をきたしやすくなるので、安易に行うのは控えたほうが良いです。リハビリ期間が長くなってしまうだけでなく、回復も遅くなってしまう例もあります。

まず保存的治療の原則は、活動性の低下を含めた生活指導と膝関節周囲筋の筋力増強を行いながら、必要に応じて装具を装着させて膝くずれを起こさないように注意させながら復帰させることです。不安定性が残ったまま安易に運動やスポーツを行うと、膝くずれを繰り返して、二次的に半月板や関節軟骨に損傷を生じます。また、将来関節症変化が出る可能性が高くなってしまうので注意が必要です。

次に手術治療です。単独損傷の場合には、手術後の関節内癒着や損傷したACLの自然治癒の可能性を考えて、受傷後1ヶ月程度経過をみます。不安定性が残っていれば関節可動域制限や歩行が改善されてから手術をします。(損傷したACLの自然治癒は10数年に1人くらいの可能性でいます。)

ここで一つ注意なのが、ACL損傷の診断を受けてからすぐに手術を考えないということです。特に競技者であれば、一度手術をすると復帰に時間がかかるだけでなく、元の状態に戻りづらくなってしまいます。まずはトレーナーやドクターとよく話し合い、手術以外の可能性を検討することをオススメします。

4.膝半月板損傷
について

先ほどのACL損傷に関連して半月板損傷についてお話していきます。半月板は、大腿骨顆部と脛骨プラトーの間に存在するC型をした繊維軟骨です。単独で損傷される場合もありますが、靭帯損傷に合併する場合もあります。単独損傷では斜断裂や横断裂が多いですが、ACL不全膝では縦断裂やバケツ柄断裂が生じやすいです。いったん損傷された半月板は血行のある部位(半月板外周辺15〜25%)では瘢痕組織で治癒する可能性がありますが、血行のない部位では自然治癒は望めません。

受傷機転は

1. 外傷
2. 先天的な形状
3. 加齢変化

この3つに起因して損傷します。日本人に比較的多いのは外側円板状半月板が損傷しやすいと言われています。

続いて半月板の治療法についてです。半月板は従来機能が過小評価されて切除術が広く行われてきました。しかし、半月板の機能の重要性や切除後の関節軟骨への障害が危惧されています。近年では、できるだけ半月板の機能を温存することを治療の原則と考えるようになっています。保存療法の目的としては、疼痛のコントロール、半月板損傷に随伴して起こりうる大腿四頭筋を中心とした膝周囲筋の筋力低下の予防や改善にあります。

一方、外科的治療の目的は損傷された半月板を治癒させるか、疼痛の原因になっている損傷半月板を摘出するかになってきます。関節鏡にて損傷半月板の病態を観察した後、縫合または切除術を行います。しかし、スポーツ活動性が高い競技者の場合、切除術後の関節症性変化が生じる可能性が高く、安易な切除は慎んだ方が良いでしょう。

5.足関節外側靭帯損傷
について

足・足関節の底屈・内転・回外強制による足関節外側靭帯の損傷で、内がえし捻挫の中で圧倒的に多数を占めています。足関節外側靭帯は前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯の3靭帯で構成されています。よく言われる捻挫は、主にこの3つの靭帯が損傷することを指します。

重症度としては、前距腓靭帯の伸張あるいは部分断裂が起こるI度、前距腓靭帯の完全断裂が起こるII度、前距腓・踵腓靭帯損傷および後距腓靭帯短繊維の断裂が起こるⅢ度に分類されます。足首にはかなり多くの靭帯が存在しておりますが、足関節は身体の土台となる箇所ですので、筋肉・靭帯・関節ともに学んでおく必要があります。

治療も重症度によって異なります。

I度損傷では、テーピングやサポーターの装着と数日間の安静で復帰が可能な場合が多いです。
II度損傷ではギプス固定もしくは半硬性装具の着用を行い、3週間以上の患部安静を行います。その間に免荷を行う必要はありません。損傷形態によっては6週間以上治療が必要になる場合があります。
Ⅲ度損傷では初期はギプス固定が望ましいです。腫脹が消えてからは半硬性サポーターに変更します。

もし、後距腓靭帯損傷も合併していて強い不安定性があった場合には手術を選択した方が良いでしょう。また、不安定性や疼痛が慢性化してテーピングやサポーターでの対応に限界がきたら靭帯再建術を考えましょう。不安定性の強い状況で運動やスポーツを継続すると軟骨の障害をきたして将来的に変形性足関節症へ移行する可能性があるので注意が必要です。

予防としては再捻挫の予防が重要です。多くの捻挫は治癒していきますが、治り切らない段階での再捻挫が慢性化の要因になります。機能を早期に回復する目的で、バランスボードを用いた訓練や腓骨強化訓練を行い、復帰してからもテーピングやサポーターの使用を推奨します。

ここで覚えておかなくてはいけないのが、損傷した靭帯は、基本的には元に戻ることはないということです。捻挫はよくある怪我ですが、クセになりやすいです。処置を甘くしすぎたり、怪我後のリハビリや回復を怠ると、何度も同じような怪我をしてしまいます。怪我をしないのも大切ですが、その後のケアもしっかりと行ないましょう。

【最後に】

今回は下肢編を紹介していきました。上肢編も下肢編もどちらも重要なものばかりで、優先すべきものを取り上げました。今のお客様やサポートしている選手の状態を考えながら、ご自身の知識を深めてアウトプットしていってください。

怪我の種類はまだまだ多いです。全てを完璧に知る必要はありませんし、怪我の断言をするのはドクターです。まずは広く浅く、自分の知識として取り入れることを目標にしましょう。一度に全て覚えることは難しいので、何度か読み返しながら学んでいってくださいね。

▼ライター
高月宏和(Hirokazu Takatsuki)
スポーツ系の専門学校を卒業後、J1リーグに所属する静岡の清水エスパルスに入社。一般の方からプロ選手までのトレーニング指導を5年経験したのち、パーソナルトレーナーとして独立。独立から7ヶ月後にパーソナルジム『BodyBrand』を設立。主に一般の方の『美姿勢づくり』『ダイエット』をサポートするパーソナルジムとして定評があり、現在は5名のトレーナーと活動中。

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