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【スポーツトレーナーは知っておくべき!】部位別の外傷と治療法(上肢編)

寄稿

2021.11.30

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パーソナルトレーニング指導をするにあたって、一つ覚えておいてほしいことは、常に怪我と隣合わせであるということです。 トレーニングは筋肉を傷つける行為です。筋肉を動かして傷つけ、それを修復させることで筋肉は育っていきます。そのためには身体に負荷がかかりますよね。重りを使ってトレーニングすることもあるでしょう。身体に負荷をかけるということは、身体を損傷させる、つまり怪我がつきものということです。 もちろん、怪我はさせようとしてさせるものではありません。できれば筋肉痛以外の痛みは避けるべきです。ですが、万が一お客様が怪我をしてしまった場合、すぐ隣にいるのはトレーナーです。そういった場面になることも想定して、リスク管理はしておくべきです。 今回は外傷について部位別にまとめてお伝えしていきます。全てをこの記事だけで網羅するのは難しいので代表的なものをお伝えしていきます。

【そもそも外傷とは?】


外傷とは転倒・衝突などの1回の外力によって組織が損傷されることです。一般的な言葉でいえばケガに当たります。

外力には直接的な外力と間接的な外力があります。最近は、相手との接触などによる接触性外傷と着地や切り返しのときなどに体のバランスを崩すことによって生じる非接触性外傷を分ける考え方が一般的になっています。非接触性外傷の代表的な疾患としてはアキレス腱断裂・肉ばなれ・膝前十字靭帯損傷などが挙げられます。外傷の分類には創の状態での開放創か非開放創かの分類、外力の種類により機械的損傷か、物理的損傷か、科学的損傷の分類や部位によって頭部外傷・体幹の外傷・四肢外傷の分類などがあります。特に、開放創がある場合には二次的感染に注意しなくてはなりません。また、外傷は損傷される組織や程度によって打撲・創傷・骨折・脱臼・捻挫・肉ばなれ・腱断裂・神経損傷・血管損傷などに分けられます。特殊なものとして脳震盪や内臓破裂などがあります。

次に外傷の症状についてです。局所的なものと全身的なものに分けられます。局所的なものの症状としては出血・疼痛・熱感・腫脹・変形などがあります。理学的所見としては疼痛部を中心とした圧痛・感覚障害・筋力低下・異常可動性などが挙げられます。

一方、全身的なものとしては疼痛・精神的動揺による一次性ショック、出血や体液喪失による二次的ショックが起こることがあります。意識消失を伴うこともあるでしょう。また外傷に伴う合併症として感染・ショック・呼吸障害・腎障害・神経麻痺などがあります。

外傷は、初期治療とその後の適切なリハビリテーションがとても重要になってきます。この適切な治療ができるかどうかで復帰までの月日が大きく変わってきたり、後遺障害を生じることもあるので、特に要注意です。それではここから部位別に具体的にみていきましょう。
 

【頸椎椎間板ヘルニアについて】

頸椎には、

1. 頭部を支える支持機能
2. 頭部を目的の方向に向ける運動機能
3. 神経組織を保護する機能

この3つがあります。

これらの機能を果たすために重要なのが、椎間板と椎間関節です。名前は聞いたことがあるかもしれませんね。

椎間板は、保水能力を持つプロテオグリカンを多く含むゲル状の髄核の周囲を繊維輪が取り囲む構造をしており、水分を多く含むことによって、物理的特性として粘弾性を持って衝撃吸収をするいわゆるショックアブソーバーとして働きます。椎間板ヘルニアは、変性した髄核が繊維輪を突破して脊柱管内に脱出した状態のことをいいます。C5〜6椎間が1番可動域が大きく、椎間板の編成頻度も高いのでヘルニアが多く発生します。また、椎体後面に縦に連続する後縦靭帯は正中で厚くなっているので髄核の脱出は左右どちらかに片寄って起きやすくなっていて、ちょうど神経根の前に隆起しやすいのです。

このことから、片側の神経根障害の頻度が高くなります。椎間板ヘルニアには繊維輪が後方に膨隆した膨隆型、髄核が繊維輪を突破して脊柱管内に脱出した脱出型、脱出髄核が母髄核との連続を断たれて脊柱管内に遊離した遊離型に分けることができます。

続いて症状についてです。
症状は神経根のみの圧迫をきたした場合(神経根型)と脊髄を圧迫した場合(脊髄症型)についてお話します。

神経根型の症状は、頚部から上肢にかけての激しい放散痛や痺れがあります。また、その障害神経根の支配する領域の疼痛や麻痺症状、筋力低下や深部腱反射の低下・消失があり、その範囲によって神経根の高位を診断することができます。

一方、脊髄症型は脊髄圧迫症状として圧迫部位以下の運動・知覚障害が出てきます。その症状はさまざまですが、進行すると痙性四肢麻痺が出てきて手指の巧緻性の障害や歩行障害が出てきます。

最後に治療方法です。
治療方法は神経根型・脊髄症型で異なります。神経根型は急性期の激しい疼痛が存在する時期には安静、頚部牽引を行い、消炎鎮痛薬の投与を行います。通常は数週間程度で疼痛は軽減しますが、改善しない場合は神経根ブロックも行う場合があります。2ヶ月間の保存療法に抵抗して疼痛によって日常生活動作や仕事に支障をきたすようであれば手術療法も検討します。

脊髄症型は症状が軽度であれば消失を待ちながら保存療法が可能です。ただ、自然消失するかどうかも個体差があります。脊髄の障害が不可逆的なものになる前に圧迫を除去する必要があるので、神経根型よりも手術適応になる可能性は高くなります。

【肩関節前方脱臼について】

肩関節脱臼は前方・下方・後方とありますが、前方脱臼が圧倒的に多いです。外傷性前方脱臼は多くの場合反復性に移行していきます。初回脱臼が10歳代の場合は90%以上が、20歳代の場合は80%以上が反復性に移行するとされていて、初回脱臼年齢が高くなるほど反復性への移行率は低下します。

肩関節前方脱臼はスポーツ活動中の受傷が圧倒的に多いです。ラグビーやサッカー、柔道などのコンタクトスポーツや、スキーや野球などの転倒やスライディングで多く発生します。受傷する際の姿勢としては、挙上した腕を後方に持っていかれるなどの外転外旋位や過屈曲を強制される場合、転倒して体側よりも後方に腕をついた場合などです。反復性の場合は2回目以降の脱臼は、比較的軽い外力で起こるようになります。ちょっとした動作で脱臼したり不安感を覚え、ひどい場合には日常動作や就寝時の寝返りやあくびなどでも外れるようになってしまう場合があります。

続いて診断方法です。
病歴から診断は容易ですが、中には患者自身が脱臼や亜脱臼を認識していない場合があるので注意が必要です。スポーツのプレーや生活に支障をきたしていれば専門医を受診して3DCTやMRAなどの画像診断を受けるべきです。

そして治療方法です。
初回脱臼の場合は保存療法が原則となりますが、コンタクトスポーツや野球の場合には再脱臼がなくてもパフォーマンスが戻らない場合には、手術による修復が必要な場合があります。反復性の場合は手術をしないと完治は望めません。最近では関節鏡による治療技術の進歩がめざましく、術後に完全復帰を果たす人も増えてきています。

【肘の外傷について】

上腕骨外側・内側上顆炎
外側・内側上顆炎は肘関節腱付着部障害の総称です。成長期に生じるものと成人にみられるものがあり、原因が異なります。成長期にみられる外側・内側上顆炎は小学校高学年から中学生にみられます。この時期には、身長の増加が著しく骨性の成長に比べ筋の伸張が劣るので腱付着部にかかるストレスが大きくなり疼痛をきたします。特に外側よりも内側疼痛が強く、筋の成長が追いついてくると疼痛も消失します。

成人にみられる外側・内側上顆炎は、テニスやゴルフによって疼痛をきたすのでテニス肘やゴルフ肘とも呼ばれます。男性より女性に多く、内側より外側が多いです。スポーツに関係なく40歳前後に生じることもあり、原因としては腱の変性にあります。症状の特徴としては、外側上顆炎は症状が強くなると、日常でタオルを絞ったときの肘関節の外側痛が出てきます。前腕回外伸筋群の肘関節外側上顆への付着部の圧痛を認め、特に短橈側手根伸筋の圧痛が多いです。手関節を背屈させて抵抗を加えると疼痛をきたします。一方、内側上顆炎は前腕屈曲回内筋群の内側上顆の圧痛が特徴です。前腕回外位で手関節を進展させると疼痛を誘発します。

治療としては、外側・内側上顆炎どちらとも安静が第一です。抗炎症の湿布や軟膏の外用薬を用いて必要に応じて鎮痛薬を追加します。症状が軽くなるまで数ヶ月を要することが多く、単に繰り返すストレスのみだけでなく、持久力の低下や筋柔軟性の低下も一因と考えられます。筋力訓練やストレッチが保存療法として効果が期待できます。自己マッサージも局所ストレッチにあたるので、症状和らげるために効果的です。

これらに加えて症状が長期化する場合には、温熱療法や1週間以上の間隔をあけてのステロイド局所注入を行います。局所注入は効果により間隔をあけていきますが、数ヶ月間であれば腱に問題を生じることなく回数制限をする必要もありません。テニス肘バンドによる疼痛緩和がみられる場合には装着することもありますが、効果が出ない場合やパフォーマンスを制限してしまう場合もあります。またテニス肘バンドを装着する場合、圧痛部位よりも遠位で手関節背屈時痛がない部位に当てるようにしましょう。

【腰椎椎間板ヘルニアについて】

腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板は二つの構成要素があります。そのうちの一つは繊維輪の編成による脆弱化と破綻があり、もう一方の髄核が一定の弾性を維持している状況が腰椎椎間板ヘルニアの発生する条件と考えられています。このことから好発年齢が30〜40歳であるといわれています。繊維輪の変性がみられない若年層の腰椎椎間板ヘルニアの発生は、一時的な外力の発生による繊維輪の損傷が考えられます。型に関しては、繊維輪がまだ完全に破綻してない椎間板膨隆型、繊維輪は破綻しているが後縦靭帯は温存されている後縦靭帯下脱出型、後縦靭帯も破綻している経後縦靭帯脱出型、脱出した髄核が遊離して移動した遊離型があります。

一般的に椎間板に対する軸圧に加えて回旋力が作用することで、繊維輪の破綻・髄核の移動・脱出が発生しやすいと考えられています。スポーツの場面ではこの動きはしばしば行う運動でもあります。また、椎間板内圧は立位より座位の方が高くなることが知られています。したがって椎間板の圧が上昇する姿勢や運動様式が腰椎椎間板ヘルニアを発生させているのです。画像診断や徒手的検査によって診断や評価を行います。

治療法としては、保存療法や体幹の筋力強化によって進行を遅らせていく必要があります。ひどい場合には手術療法が適用されることもあります。

【最後に】

今回は上肢編として上肢の外傷と特徴をお話してきました。正直、かなり難しいですよね。まず漢字が多いです。(笑)なんか四字熟語以上のものがたくさん並んでいて、いつも漢字が多くて少し読みづらかったかもしれませんね。

ですが本当に大切なことで、これを知っているのと知らないのでは、全く違う指導になるんです。理解した上で指導する場合は、「この動きは脊柱に負荷がかかるからよくないフォームだな」とか「このトレーニングはこのお客様には適していないな」などと判断することもできます。例えば皆さんがパーソナルトレーニングを受けるお客様側だったとして、こういった怪我や処置方法を知らないトレーナーだとしたらどうでしょうか。少し不安ではないですか?怪我をさせないトレーナーも大切ですが、もしそうなった場合に処置をしてくれるトレーナーの方が安心で信頼できると思います。筋肉だけじゃなく、トレーナーとして成長するためにはしっかりと学んでおくことをオススメします。

今回紹介したものは、どれも外傷として既往のある方が多いものを出しました。現場で発症することもあれば、すでに経験があり、対処や既往を踏まえた上でのアドバイスを求められることも多いと思います。医学の知識は深いですが、指導をしていく上でとても重要です。お客様、医療従事者との信頼を築くために知識を深めていきましょう!

▼ライター
高月宏和(Hirokazu Takatsuki)
スポーツ系の専門学校を卒業後、J1リーグに所属する静岡の清水エスパルスに入社。一般の方からプロ選手までのトレーニング指導を5年経験したのち、パーソナルトレーナーとして独立。独立から7ヶ月後にパーソナルジム『BodyBrand』を設立。主に一般の方の『美姿勢づくり』『ダイエット』をサポートするパーソナルジムとして定評があり、現在は5名のトレーナーと活動中。

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