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パーソナルトレーナーが知っておくべき!運動生理学の基礎知識

寄稿

2021.10.11

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身体の仕事をする、もしくはこれからしていきたい方は、必ず勉強しておかなくてはならないものがあります。それが『運動生理学』です。これは避けては通れません。最優先事項と言ってもよいくらいで、個人的には栄養学や解剖学よりも優先して学ぶ必要があるかなと思っています(もちろん他の項目を大切なのですが)。 運動生理学は本質的な身体の基礎基本を学ぶことができます。正直これを学んでおかなくては、どの分野を勉強したところで、深いところまで理解できないと思います。運動やスポーツの生理学の在り方を考えるにあたって、体力をどのように考え、そして理解しておくことは避けて通ることができません。運動やスポーツ生理学の目的は、運動することによって人はどのような身体的変化をもたらすのかを明らかにしたり、動くことの肉体的メカニズムを解明することにあります。 今回は、運動とスポーツ生理学の基礎をまとめました。

1.体力の解釈

『体力には自身がある』『自分には体力がない』というような表現をよく耳にしますが、ではこの体力とはいったい何なのでしょう。
そして、体力が無い=健康ではないとうイメージが強いですが、違いは何なのでしょう。

(体力・健康とは)
個人の持つ身体能力であり、健康とはその体力を十分に発揮できるような個人の精神的身体状態。

このように言われています。つまりは、体力と健康は異なる概念だということです。

そして体力は数値として測定が可能ですが、健康を数的に評価することは難しいです。しかし、体力と健康は本質的に分離できない関係にあるのも事実なんです。十分に体力を発揮するには健康でなければなりませんし、体力がある程度なければ健康ともいえません。体力は体力テストなど測れますが、その数値がよいからと言って、健康である!というわけでもありません。
上記でも述べてあるとおり、健康とは心の状態も表しますので、身体は普通でも、精神的に大きな問題がある場合は健康と言えません。心の状態に問題があれば、身体にも影響が出てきますが、、。

体力の中には身体的要素と精神的要素の2つに分けられていて、そこからさらに行動体力と防衛体力に分けることもできます。

2.神経系

神経関連の内容は、なんとなく難しいようなイメージがありますよね。まさにそのイメージ通り、神経系を理解することは筋系や呼吸循環系を理解することに比べて難しいと言われているんです。その理由としては、神経系の機能を具体的に見定めることはとても難しいからなんです。

そして、神経系の理解を混乱させる理由に、神経が日常生活で使われている意味と生理学的な理解との隔たりがあります。例えば『反射神経がよい』という表現は、素早い動きができることと解釈され、体内に本当に反射神経が存在すると誤解している人も少なくありません。反射という働きはあっても反射神経という神経は実は存在しないんです。同様に『運動神経がよい』という表現があるために、体内の運動神経機能的良否があると誤解されたりします。

その他には神経が太いという表現などがありますが、そういった表現は実はなく、いずれも生理学的な解釈とは全く異なるんです。日常生活では人の心の働きや動きの質や量が、神経に託して表現されることが多い傾向にあります。改めて神経系の解剖学的、生理学的理解に注意が必要ですね。

神経系の最も大切な役割としては、筋や内臓といった体内の各器官を人としての総合体にまとめあげることです。身体は単体で動いているようで、実はそれぞれが連動して機能しています。どこかの器官が機能しなくなったりよくない症状が出ると、他の器官が代わりに多く働かなくてはいけません。そうやって身体はバランスを取ろうとしているんです。そうなれば、今度は負担が多い内臓が悪くなってしまいます。ですので、内臓本体だけでなく、それをコントロールさせている神経の働きが大切になってきます。その主体をなすのは中枢神経であり、その働きは末梢神経などからの情報を集め、各器官への指示を出すことです。

【中枢神経】

(大脳皮質)

細胞構築学的に約50の領野に分類され、番地の数字で示されています。その中の4野は運動野で、そこにあるベッツの大錐体細胞から筋運動開始の引き金となる刺激が発せられます。その刺激は遠心性繊維の束を通じて延髄の錐体路を経て脊髄の運動ニューロンにまで直接達します。
(小脳)

主運動に関連する筋や腱からの感覚情報、視覚や加速度などの情報と、大脳皮質連合野からの情報を調整し、主運動を調節する働きをします。動きと姿勢を連動させるための協調作用を行います。運動プログラムではなくてはならない働きをしています。 
(脳幹)

身体の平衡、姿勢の保持、四肢-体幹の定型的な運動を調節します。めまいなどに影響がある部分になります。脳幹内にある延髄網様体には呼吸中枢をはじめ心臓中枢・血管運動中枢などがあり、生命の維持に不可欠な自律機能の統合を行なっています。
(脊髄)

脳の原型にあたる脊髄は、いわゆる背骨の脊柱管の中にあります。脊髄は感覚ニューロンと運動ニューロンとが直接接する場でもあり、膝蓋腱反射の中枢です。各背骨一つ一つの中にあるため、損傷箇所によって神経障害が起こる場所は違ってきます。

3.エネルギーの産生

人が活動するのにはエネルギーが必要です。そのエネルギーは自らの身体で産み出さなくてはなりません。それは食事・睡眠・運動からエネルギーを作り出すのですが、そもそもそのエネルギーの正体とは何なのでしょうか。人のエネルギーの元の元、活動するにおいて一番必要なエネルギーの要素をATPと言います。これが無ければ人は動くことはできません。

そしてそこから筋収縮のエネルギーを産み出すには、ATPが分解され、ADPという成分に変化することでエネルギーが産まれます。そしてADPは以下の3つの分解過程からのエネルギーを得て再合成されます。

クレアチンリン酸がクレアチンとリン酸に分解される

グリコーゲンが無酸素的に分解される

グリコーゲン、脂質、タンパク質が有酸素的に分解される

【非乳酸性エネルギー供給機構】

ATP-CP系機構ともいわれます。この機構は酸素を用いることはありません。瞬時に大量のエネルギーを供給できますが、その量は極めて少ないです。最大強度の運動ならば約8秒で消失してしまいます。跳躍・投てき・短距離ダッシュといった、短時間で強いエネルギーを必要とする運動の主エネルギー源となります。
【乳酸性エネルギー機構】

グリコーゲンが酸素のない状態で分解される際に産生されるエネルギーであるために、解糖系機構とも言われています。糖が分解される際に発生するエネルギーになります。30〜60秒の全力運動で消失するので、中距離走での主なエネルギー源になります。サッカー、バスケットボールなどの競技スポーツでは、最も重要なエネルギー源です。

また、この名称にもあるように副産物として乳酸を生ずるのが特徴です。この乳酸はある以上に蓄積されると筋収縮を阻害する一因となりますが、乳酸の蓄積だけが筋疲労をもたらすわけではありません。乳酸というと、身体を疲れさせる悪い物質。というイメージがありますが、一概にそうでさると言い切れないということですね。また、乳酸は肝臓にてグリコーゲンに再合成されたり、心筋や骨格筋のエネルギーにも用いられます。 
【有酸素エネルギー機構】

人の活動の最も基本となるエネルギー機構です。グリコーゲン、脂質、タンパク質が筋繊維にあるミトコンドリア内で、クレブス回路という回路にて酸素と結合することにより、産生されるエネルギーです。エネルギーの供給には2〜3分の時間がかかりますが、その産生量は無限といって良いです。長距離走やレクリエーションスポーツの主なエネルギー源です。この反応の結果、水と二酸化炭素が生じます。近年ではこのエネルギー機構を十分に働かせて健康の維持と増進の運動として有酸素運動がオススメされています。

これらのエネルギー機構については、必ず理解しておきましょう。運動生理学において、最も重要と言ってもいいくらいです。この流れや仕組みを理解することで、トレーニング指導する際のメニューの組み立て方や、お客様へのアプローチ方法もかなり変わってきます。なぜこういう反応になるのか、なぜ今このトレーニングが必要なのか、お客様へ説明するときにも役立ち、説得力が生まれると思います。

4.呼吸器系

呼吸は1日に何回行われるかご存知でしょうか。実は、呼吸は1日に2万回行われると言われています。ですが、「さて、今日は呼吸するか!」「今日は呼吸がんばるぞ!」などと意識することはほぼ無いと思います。しかし、この無意識に当たり前に行なう呼吸についてしっかりと理解することは、人体のさまざまな面で役立つことは間違いありません。

【呼吸中枢】

呼吸を支配する呼吸中枢の場は延髄にあり、吸息中枢と呼息中枢に分かれます。呼吸中枢へは体内のさまざまな部位からの情報が寄せられ呼吸運動が調節されますが、その調節には神経的調節と化学的調節とがあります。化学的調節をする二酸化炭素は注意が必要です。2つある呼吸中枢ですが、両中枢は相反的に働いて、どちらかの中枢が興奮するときは他方の中枢は制御されています。仮に両中枢が同時に興奮することがあれば吸息中枢が優先されます。

(呼吸運動)

吸息運動は大気からの空気の流入ですが、それは肺の中の圧力が大気の圧力よりも低くなることでなされます。つまり、肺が陰圧になるからです。吸息運動は胸郭挙上、横隔膜沈下により行われ、それに関わる主な筋には外肋間筋と横隔膜があります。どちらの筋も収縮することにより肺を陰圧にして空気を流入させます。

一方、呼息運動では胸郭を沈下させれば良いですが、それには主に内肋間筋が働きます。通常、呼息運動は重力の影響あるいは組織自体の弾性により自然になされます。胸郭の運動による呼吸を胸式呼吸、横隔膜によるものを腹式呼吸と呼びますが、通常の呼吸は両者を併用する胸腹式呼吸です。
(肺容量)

肺に入る空気の量は肺活量が一般的にはよく知られています。しかし、肺に入る空気の量は、この肺活量に加えて、いくら頑張っても呼出できない残気量があり、両者を併せて全肺容量といいます。

酸素摂取量・・・1分間あたりで摂取される酸素の量を酸素摂取量といいます。呼吸循環系では筋まで酸素を運搬することが最大の目的です。一般に体内に摂取される酸素の量は、 酸素摂取量=吸気中の酸素量ー呼気中の酸素量で求められます。

生理学では、運動強度の指標として酸素摂取量が最も信頼され、多く用いられてきました。その理由は、酸素摂取量により人体が産生したエネルギー量がわかるからです。酸素1ℓの消費はほぼ5kcalのエネルギーを消費に相当します。呼吸は自然に身体が動いてくれていると思われがちですが、実は筋肉も大きく関与しています。呼吸に関与する筋肉は呼吸筋と言われ、主に肋骨に付着している、外肋間筋・内肋間筋が働きます。日常から、大きく呼吸する練習や意識を繰り返すと良いでしょう。

【運動生理学を勉強する上での注意点】

さて、運動生理学についてここまでお話してきましたが、、、。難しい!ですよね。(笑)解剖学もそうですが、生理学も漢字が多く、人体に関することも学ぶのはやはり簡単ではありません。

ですが、これは基本中の基本です。今日上記でお話した内容を、そっくりそのままお客様に説明する必要はありません。専門用語が多すぎますからね。ですが、身体の指導をする仕事をする以上、僕たちは必ず覚えておく必要があります。知っている・知らない、とではお客様への信頼関係に影響があるだけでなく、万が一の怪我の予防にも繋がります。常にリスクと隣り合わせであることを理解して、日頃から学ぶ意識を忘れないようにしていきましょう!

▼ライター
高月宏和(Hirokazu Takatsuki)
スポーツ系の専門学校を卒業後、J1リーグに所属する静岡の清水エスパルスに入社。一般の方からプロ選手までのトレーニング指導を5年経験したのち、パーソナルトレーナーとして独立。独立から7ヶ月後にパーソナルジム『BodyBrand』を設立。主に一般の方の『美姿勢づくり』『ダイエット』をサポートするパーソナルジムとして定評があり、現在は5名のトレーナーと活動中。

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