どの業界にも稼げる人と稼げない人が存在します。もちろん、「稼がなくていい」と思っている人もいます。しかし、「稼げる」ということはモチベーションにも直結しますし、生活の幅も広がります。また「稼げる」ということは、現在の労働時間を半分にして、給料を維持することもできます。パーソナルトレーナーは技術職ですので、数もこなさないと上達しませんし、せっかく学んだことも実践の場が少ないと忘れてしまいます。 今回は現場で活躍されているトレーナーの特徴をまとめました。「稼ぐ」ことがプラスイメージになれば幸いです。
継続のコツは細かいスキル
①稼げる=継続率
売り上げを伸ばすためには、まず継続率を上げることが必須となります。定期購入していただけるお客様を積み上げることが最も重要です。新規のお客様は、店舗にもよりますが月に2〜3人程度でしょう。毎月その2〜3人を消化していては売り上げは伸びません。
また、季節の影響があります。夏前の6月あたりはお客様は増加傾向にあります。露出が増え、イベントも多い季節はダイエットやボディメイクを希望する方が増えるためです。しかし、11月にもなればその客足は遠のきますし、そもそも寒い時期はジムにいくことが億劫になります。目的がないとお客様は来店してくれないのです。
ダイエットもボディメイクも、継続した方が良いと頭ではわかっていても、なかなか一年後の夏を目標に頑張れる人は少ないと思います。
すなわち、いかに暖かい時期にお客様を積み上げるかが肝となります。
そして、継続するメリットは労力を減らすことにも繋がります。人間関係を構築することは一苦労です。「どんな人かな?」「気が合えばいいな」というのは誰しも抱きます。挨拶に始まり、自己紹介、目的を聞いて、トレーニング開始。今後の意向や継続の有無までが初回の主な流れです。これを毎セッション繰り返すことは容易ではありません。
ある程度、信頼関係が構築されている方がトレーナーも運動指導に注力できます。そういった点も含め、継続率を上げることが重要となります。
②どうやって継続率を上げるのか?
継続率が高いトレーナーの共通点として欠かせないのが、「細かいスキル」を持っているということです。「細かいスキル」とは、「コンディショニング」のことです。ストレッチ・筋膜リリース・骨盤矯正・テーピングなど手法の種類は豊富です。コンディショニングはメインのトレーニング(スクワットやベンチプレス)を行う前に、お客様の体を調整し、よりトレーニングの効果を引出します。
メイントレーニングは重りを扱う分、体への負担も大きいのです。猫背や巻き肩の状態でトレーニングを行うと、ほとんどの方で肩の関節に障害をきたします。腰痛持ちであれば、スクワットによって悪化させることもあります。これでは本末転倒です。当たり前ですが、人は痛みをとても嫌いますし、お客様から不信感を抱かれます。コンディショニングで、適切な姿勢に戻し、動ける状態にしてあげることで、お客様は安心してトレーニングを継続することができるのです。
また、コンディショニングは人にしかできないということが強みで、これこそがパーソナルトレーニングの醍醐味といえます。最近では、健康器具やマッサージ機で筋肉をほぐしたり調整する方法もありますが、まだまだ人の手には勝てません。人の手だからこそできる手法に、徒手抵抗という技術があります。例えば、腕立て伏せをしているお客様の背中を上から押して抵抗を与える手法です。マシンであれば、重さを調節することしかできません。しかし、人の手であれば微妙な負荷の調節もできますし、角度、可動域も自由自在に変化させられるのです。適切な徒手抵抗ができると安心・安全にお客様は追い込むこともできます。
コンディショニングの引き出しが多様なほど、継続率も上がり、どのお客様の体にも対応することができます。トレーニング中に数を数えるだけなら誰でもできます。「あなたにしかできない技術」こそがトレーナーとして選ばれる理由になります。必須スキルと言っても過言ではないでしょう。
今後、もっと健康器具は発展していきます。アプリや自宅での運動機器も脅威です。しかし、人間の感度や積み上げてきた技術には到底追いつけません。自身の強みとしてコンディショニングを身につけるのはいかがでしょうか?
③高齢者
総務省統計局によると、2019年時点で65歳以上の高齢者人口は「3588万人」と過去最多となりました。高齢化率は「28.4%」と4人に1人強が高齢者です。また、2040年の高齢化率は35.3%と3人に1人が高齢者と見込まれています。
歳を重ねるごとに身体能力は低下し、外に出ることも億劫になります。うつ病も問題視されていますし、転倒からの寝たきりは死に直結する可能性が高いのです。国としても対策を練っていますが、我々トレーナーにできることはひとりでも多くの高齢者の健康寿命を伸ばすことです。
治療してくれるところはたくさんありますが、予防してくれる場所は足りていません。最近は予防するという風潮が高まってきています。
フィットネスクラブは高齢の方もたくさん利用していて、パーソナルトレーニングを受ける方も増えています。
②でもお伝えしましたが、高齢者こそコンディショニングスキルが必要です。いきなり重りは持てませんし、人によっては重りが必要ない方もいます。長年の体の歪みを調整し改善をして、健康になっていただく。年齢とともに諦めることが増えます。「昔のように旅行に行きたい」「孫と遊びたい」「生き生きとしていたい」などと、思ってもなかなか希望を持てません。その希望を実現できるのがコンディショニングトレーナーです。高齢者に対応できるトレーナーはこれからの時代、非常に需要が高いです。
④デスクワーカーの増加
スポーツ業界に携わっていると気づけませんが、世の中はこれほどまでにデスクワークになっていることに驚かされます。常に体を固定し、数時間も作業をしています。筋肉は固まり、基礎代謝は低下し、身体の不具合はいたる所に出てきます。年齢にかかわらず、使わない筋肉は力も量も低下し、やがて自身の体重を支えることで精一杯になります。「階段で息が荒れる」「健康診断で指摘された」「頭痛で眠れない」そんな悩みを抱えた20〜30代のお客様がたくさんいます。
体を動かせば改善するだろうととりあえずジムに入会してみる。しかし、ジムに入会してすぐに成果が上がるでしょうか?ほとんどの方で難しいかもしれません。もちろん目標を達成される方もいます。結果を出せるお客様は、毎日のようにジムに通い続け、極端な食事制限や根拠のないダイエット法を試し続けた結果の成果です。意欲は素晴らしいのですが、「長続きするのか?」「健康的なのか?」「その人に合っているのか?」など疑問が残ります。
また、人は痛みや不快感を嫌います。女性の悩みに「肩こり」があります。肩こりの始まりはデスクワークによるものがほとんどで、姿勢の改善と弱った筋肉のトレーニングを行い改善します。そもそも揉んで柔らかくするだけでは肩こりを繰り返してしまいます。なぜなら、肩が凝る姿勢が染みついているからです。肩こりは結果論で、その過程をトレーナーが突き止め改善するのです。
ダイエット目的のお客様は短期集中の方が多く、目的を達成した場合に継続は難しくなります。しかし、ほとんどの方でダイエット以外にも悩みはあります。肩こり、腰痛は国民病とまで言われています。
ダイエットに成功して、姿勢もよくなり、痛みも改善できるとお客様は大変喜んでくれますし、長いお付き合いすなわちパーソナルトレーニングを継続してくれるのです。
コミュニケーションが口コミに繋がる
①ターゲティング
実際にパーソナルを購入される方の7割は女性です。女性はひとりで黙々とトレーニングすることは好まず、誰かと共感したり、楽しみながら目標を達成します。グループレッスンもほとんどが女性です。そして、年代問わず「キレイに磨きをかけたい」「若々しくありたい」と思うのは女性なら当たり前です。すなわち、女性に好まれるトレーナーは成功する傾向にあります。成果を出すのはもちろんのこと、常にコミュニケーションを取ることが大切です。まず、話に耳を傾け、その日のテンションや気持ちをくみとること。トレーニング中も声をかけ、励まし、共感しながら目的を達成しましょう。
もし、トレーニングに満足していればジム友達や家族を紹介してくれます。新規獲得の労力を考えると、紹介していただけることは非常にありがたいです。紹介したくなるトレーナーは礼儀や気遣いはもちろんのこと、コミュニケーションに長けています。技術も大切ですが、人間性も磨くことでお客様は自然とついてくるのです。
②もうひとりの営業マン
新規のお客様を獲得するために、トレーナーは営業をします。スポーツジムであれば直接お客様に声をかけたり、キャンペーンをしたりと新人トレーナーなら必要な作業です。この営業よりも強力な集客方法があります。それはアルバイトスタッフから紹介してもらうことです。入会と同時にパーソナルを申し込まれるお客様もいて、フロントスタッフはニーズに合ったトレーナーを紹介します。ここで紹介されることが重要です。紹介する側にも責任がありますので、信頼関係なくして紹介はできません。「このトレーナーはどんな問題を解決してくれるの?」では、お客様を任せられません。普段からスタッフともコミュニケーションを取ることが大切です。あなたが現場にいない時でもスタッフがあなたの営業をしてくれるのです。
本数よりも客単価を上げる
①客単価
売り上げを伸ばすには二つ方法があります。一つは本数を増やすことです。10本よりも30本、30本よりも50本のセッションを行えば、当たり前ですが売り上げは増えます。
しかし、本数を増やすことは労働時間も増えますので限界があります。毎日ジムに在中しているトレーナーなら可能ですが、「午前中だけ」「レッスンの前後のみ」と時間に制限があるトレーナーには時間的な売り上げの限界が出てきます。
そこでもう一つの売り上げを伸ばす方法は1本のセッション料金を上げることです。1時間6,000円から7,000、8,000円に上げていくことです。セッション数にもよりますが、1ヶ月でも売り上げは変動しますし、1年となれば大きく変わります。
月50本 1セッション6,000円のトレーナーの場合
50×6,000=月売り上げ300,000円 ×12ヶ月=年間売り上げ3,600,000円
月50本 1セッション8,000円のトレーナーの場合
50×8,000=月売り上げ400,000円 ×12ヶ月=年間売り上げ4,800,000円
6,000円と8,000で年間1,200,000円の売り上げの差がつきます。明らかに後者の方が稼げるのです。もちろん値段に見合った技術、接客スキルを備えなければなりません。やみくもにセッション料金を上げるのは考えようですが、後々セッション料金を上げることを視野に入れて日々技術の向上を目指しましょう。
②リスクヘッジ
トレーナにはセッションキャンセルがつきものです。月に多ければ5〜10本のキャンセルが出ます。お客様にも、急遽仕事が入ることや家族の不慮は予測ができません。やむを得ず当日のキャンセルもあります。そこでできるだけそのマイナスを小さくする方法として、セッション時間を短くすることです。1時間6,000円がキャンセルになることと、30分3,000円のキャンセルでは後者の方がマイナスは小さくなります。多くのお客様を抱え、セッション時間を短くすることでキャンセルというリスクを最小限にでき、売り上げを安定させることができます。
「客単価を上げる」「セッション時間を短くする」「顧客数を増やす」ことで安定的に売り上げを伸ばし継続できます。
料金を上げて、時間も短くするということはトレーナーはそれだけのスキルが必要となりますし、多くのニーズに答えられるテクニックを準備しておかなければいけません。
「ただ稼ぎたい」ではなく、自身に見合った「目標」を定め実行することが重要となります。
谷口一樹(Kazuki Taniguchi)
現在は、パーソナルトレーナー兼インストラクターとして都内で活動中。 大手フィットネスクラブトレーナー養成の帯同やセミナーの開催、フリーランス向け懇親会を主催している。 フィットネス業界は他業種に比べフリーランスが多く、各個人が活躍できるために日々、奮闘している。
モットーは「人と人との間でしか感動は生まれない」
スポーツ歴:野球(甲子園2大会出場)ソフトボール(全国3位)