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パーソナルトレーニング中の障害におけるリスク管理

寄稿

2020.05.20

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日本でも、パーソナルトレーニングが普及し始めていますが、パーソナルトレーニング中は、当然怪我のリスクがあります。万が一、クライアントや第三者に、不注意から怪我をさせてしまった場合の法的な問題について、ご紹介させていただきます。パーソナルトレーナー向けの損害賠償保険やトラブルなく仕事が継続できるようなポイントをまとめました。

パーソナルトレーニングセッションの怪我のリスク

私は整体院の経営とパーソナルトレーニングを15年以上行っておりますが、最近のパーソナルトレーニングブームに驚くばかりです。毎日のようにメディアやネットでパーソナルトレーニングやフィットネスの映像を見ますが、一方ではパーソナルトレーナーの参入者が増えることで、安全性のリスク管理や今後、怪我などで訴訟問題に陥るケースが増えてくると推測しています。

パーソナルトレーナーと言う専門職に就くうえで、必要不可欠な知識や経験、初回面談でのメディカル的な情報確認や疾患がある特定のクライアントに対応するための禁忌事項などを専門職としてより深く学ぶ必要性を感じます。これらを学ばないで、現場に立ってしまうと思わぬ事故で取り返しのつかないことになる可能性があります。

そのリスクを抑える為に、まだまだ発展途上といって良い新しい職種だと認識し、他業種にも目を向けたり、フィットネス先進国のアメリカなどの事故や訴訟のケースを参考にして、自分自身を守っていく必要があると言えるでしょう。

トレーニング時の安全性と法的問題

パーソナルトレーナーは、比較的年齢も若く、運動経験が豊富で、体に自信のある方が多いと思います。一方、パーソナルトレーニングを受けるクライアントの方は、経済的にも余裕がある中高年層が多いです。

若いパーソナルトレーナーの方は、特に留意して頂きたいのが、20代・30代の体と40歳以降の体では全く違うと言う認識を持つ必要があります。築10年の家と築30年の家の違いと同じです。

データ的に見ても、45歳以上の閉経後の女性は骨量がかなり減り、腰痛や膝痛などの関節炎や骨粗鬆症などの問題も抱えており、高負荷のトレーニングを行うと、一瞬で痛めてしまうケースが多いと思います。

私が耳にした話ですが、ヨガレッスンで、起こった話をご紹介します。インストラクターの方がストレッチングの際に後ろから押したところ、ハムストリングスが肉離れをしてしまったケースがあったそうです。

ヨガなどのスタジオレッスンの場合はグループ指導が中心になり、パーソナルトレーニングよりも目が行き届かないので、こういったケースが多発しやすいようです。日本では、このようなケースでも訴訟になるケースはまだあまり耳にしませんが、アメリカだとトレーナー側の責任として訴訟まで発展してしまうケースもあり、日本も今後アメリカのように変わってくる可能性もあります。

私は、パーソナルトレーナー個人が情報にもっと敏感になり、予防線を張っておいた方が良いと感じています。転ばぬ先の杖というのは「言うは易く、行うは難し」で事故が起こる前に最悪の想定をしなければいけません。

フリーウエイトエリアの注意点

誰でもできるマシントレーニングよりも、バーベルやダンベルのフリーウエイトの方が怪我や障害が起こりやすい現実があります。マシントレーニングに関しては、安全性が重視されていて、パーソナルトレーナーがいなくてもクライアントがトレーニングしやすいと思います。

それに対して難易度が高いバーベルを使ったフリーウエイトは、自分だけでは正しい動きができない方も多く、パーソナルトレーニング指導としてのニーズが高いです。フリーウエイトこそ、パーソナルトレーナーの指導を受けるべき高度なトレーニングなのですが、フォームが安定するまでに怪我や障害が起こりやすくもあり、細心の注意が必要です。

整体院の経営者でもある私は、ほぼ毎日ぎっくり腰や寝違えなどの筋膜炎を見ています。筋膜炎は、程度の差こそあれ、筋肉の小さな傷が簡単に起き、あらゆるところに痛みや違和感があり、一定期間残ります。

日常動作ですら、不用意な動作で一瞬で痛めてしまう方が多いのですが、バーベルを担いでいるバックスクワットやデットリフトなどは、ちょっとしたトレーニングエラーで、より痛める可能性は高く、パーソナルトレーニングセッション時にも注意が必要です。

ぎっくり腰など筋膜の損傷の例で考えると、最低1〜2週間くらいは回復するまでにかかります。また、肉離れの際は1ヵ月以上かかるのが普通です。1〜2週間の筋膜の損傷でも、場合によっては歩行もやっとの状態になるなど、いつもリスクと隣り合わせにいるのがパーソナルトレーナーです。

クライアントが、セッション中に、ぎっくり腰や肉離れ、捻挫などが発生した場合、クライアントの仕事や日常生活に支障が出るようなことがあったら、、、クライアントも、私達トレーナーも、共に大変なことになります。

また、知人の話ですが、自分のトレーニング中に、洋服の袖にプレートが引っかかり、足元に20kgのプレートが落下して足の指を骨折したという話を聞いたことがあります。これも、パーソナルトレーニングセッション時に起こった場合は、かなり悲惨なことになると感じました。

パーソナルトレーニングのセッション中でも、バーベルのシャフトやウェイトプレートの取り扱い時にはクライアントにも声掛けをしながら、事故が起きないように念には念を入れた配慮が必要だと思います。

パーソナルトレーニングジムの増加で起こる訴訟の危険性

パーソナルトレーニングジムの普及でフィットネスが認知されてきた事は喜ばしいことだと感じています。一方で今後パーソナルトレーニングによる事故や訴訟が増えていく可能性を感じています。

アメリカは医療ミスで、すぐに訴えられるので、弁護士の訴訟ビジネスが急速に広がっていると聞きます。
医療で起こっていることは、アメリカのパーソナルトレーニング業界にもシフトしてきていると考えられます。我々、パーソナルトレーナーも医療ではないのですが、身体を見る職業である以上、一瞬の気の緩みが怪我につながる仕事だという認識を持つ必要があります。

特に駆け出しパーソナルトレーナーの時は、ボランティアのように無料に近いかたちで指導し、トレーナー活動を研修の場としている学生トレーナーも多いと思います。仮に、インターン中でも、クライアントやスポーツ選手に怪我をさせてしまった場合の過失に関しては、無料で指導をしていても、トレーナー側の責任になります。

初心者の時から、そのようなリスクを考えて丁寧に安全性重視のトレーニング指導をしていく必要があります。トレーニング指導中で痛めた場合は、初心者のパーソナルトレーナーでも責任を問われる可能性は同様であり、資質的な話でいうとホスピタリティーやコミュニケーション能力が高い人の方がすぐに適応しやすいと思います。

また、トレーナー業界は、有名スポーツ選手のトレーニング指導をすることでブランディングをでしやすく、活動をする上で実績になります。そこで注意しなくてはいけないことがあります。年俸が高いスポーツ選手を仮に怪我させてしまった場合は、賠償額も収入に対しての保証が問われ、年俸に対しての賠償額になる可能性があると聞いたことがあります。

これは、契約書によっても変わってくると思いますが、私の場合は学校やスポーツ選手と契約する場合は、契約書も弁護士にチェックを受けて、双方納得した上で、契約書に基づいた指導をするようにしています。

トラブルになることを回避できるように、契約書・初回面談で既往歴の確認や良好なコミュニケーションを努めて、用心には用心を重ねてトレーニング指導を行う必要があります。もしもの時のリスクヘッジも、長く生き残っていけるパーソナルトレーナーに必要なスキルだと思います。

高血圧、心筋梗塞などの特定のクライアント向けのトレーニング指導

多くの運動指導者が学んでいるように、最近では高齢化社会に対して、様々な疾患を抱えたクライアントのパーソナルトレーニング指導をされることもあると思います。年代や既往歴をみて、強度やエクササイズの順番もプログラムしていく必要があります。

私は、高血圧の方や糖尿病、心臓病など危険因子のあるクライアントには、エクササイズの前後に血圧や脈拍を測定し、調子を見ながら管理していきます。また、体調が悪くなった際は早めの中断など常にモニタリングしながら、事故がないように対応していきます。

また妊婦や子供のトレーニング指導も、部位により、柔軟性が違ったりと一般の方のトレーニングと注意するところも全く変わってきます。パーソナルトレーナーの学校卒業や資格取得後でも、常に多くの指導者から学び続けることが必要です。

ワークショップに参加をし続けることで、最新の情報やスキルをブラッシュアップでき、より多くの特定クライアントのパターンにも対応できるようになるはずです。

トレーナーの資格と保険の加入が必須

パーソナルトレーニングのサービスが増える中、パーソナルトレーナーがどんなに気をつけたとしても、イレギュラーな事故や過失というのは、当然起こる可能性があります。パーソナルトレーナーとして開始当初は、無保険で指導を始める方も多いと聞きます。

経験が少ないパーソナルトレーナーの時期だからこそ、多額の損害賠償責任を負うことにならないように、損害賠償責任保険に加入する必要があります。フィットネスクラブの社員の場合は、会社で保険に入ってもらうケースもありますが、フリーランスの場合は、不測の事態に備えて、自ら損害賠償責任保険に加入をしておくと安心です。

パーソナルトレーナーの仕事を行っていく上で、損害賠償保険はパーソナルトレーナーだけでなく、クライアントの為にも必要なのです。NSCAジャパン、NESTA、JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)、JHCA(日本ホリスティックコンディショニング協会)、健康運動指導士などメジャーなパーソナルトレーナー・インストラクター教育団体の有資格者向けの損害賠償保険があります。

一定のトレーナーの資格を取得し、損害賠償保険に加入して活動していくことで、安心してフリーランスの方もパーソナルトレーナーとして活動できるはずです。

中長期的にパーソナルトレーナーとして活動する為に必要な心構え

車の運転と同じように慎重に運転する人もいれば、細い道でもビュンビュン飛ばしたり、急加速や急ブレーキをするような大雑把な性格の方もいます。パーソナルトレーナーは、クライアントに寄り添いながら、二人三脚で目的達成を手助けする仕事ですが、クライアントの中にはルールを守らない方がいるかもしれません。

慎重に行う人は自動車運転でも事故のリスクは少ないと思いますが、パーソナルトレニングセッションでも、同じようにクライアントの性格を理解し、事前にコントロールするスキルが必要です。私自身は、スポーツ選手の怪我の事例などを話をして、事前にアドバイスをしています。意識づけする上では、具体的なシーンが想像できるようにデモンストレーションすることもあります。

軽微なミスから無くすことで、交通事故も重大事故発生の確率を下げることができるのは明確です。パーソナルトレーニング中の事故も同じだと思います。医療機関のカルテのように、セッション中にメモを取ることも大切だと思います。最悪のシーンで考えると、訴訟になった際に仕事の内容を証明するものは、記録です。

私自身も、整体などコンディショニングの施術を長年している為、最初と最後に関節可動域のチェックをして、動いてどこが痛いか?などモーションチェックは欠かせません。どの動きで痛みや違和感があるのか?

これをセッション前後にチェックしながら、記録にすることを徹底しています。リピートして頂いているクライアントにも、定期的なセッションで痛みの軽減や、筋出力の変化も気がついて頂けるので、リピート向上にもつながっています。

万が一、事故が起こった時に、クライアントとのコミュニケーションが細かく行われていたか?否かで、心象も変わってきます。この記事を書きながら、成果と安全性の両面が求められるパーソナルトレーナーの仕事の難しさを改めて感じました。

昨今、大学の体育会運動部やアスリートの指導者のパワハラ問題で、以前では考えられないような言動の一つ一つがニュースになっていったことが記憶に新しいと思います。一つの事故やクレームで、スポーツ業界全体のイメージダウンや、今後の活動に影響するような社会問題になりました。

私自身も、安全性を高め、障害の発生リスクを抑えた上で、自戒の念を込めてリスク管理をしたトレーニング指導をしていきたいと思った次第です。


▼ライター
根本大(Dai Nemoto)
生年月日:1971年7月20日
国際武道大学時代は少林寺拳法部として活動。大手警備会社社員として勤務。
2006年に脱サラ後1年で神奈川県川崎市向ヶ丘遊園・登戸駅に「ねもと整体&ストレッチスタジオ」を開業。パーソナルトレーナーとしても活動し、現在エニタイムフィットネス向ヶ丘遊園店と登戸店でもパーソナルトレーニング指導を行う。慢性的な腰痛肩こりなどの根本的な改善からアスリートパフォーマンス向上まで幅広く対応。 有限会社ディーエスシーエスとして法人化し、整体師やパーソナルトレーナーの現場で使えるテクニックのマンツーマン指導や開業支援コンサルティングとしても活動している。
▼資格
・関節ニュートラル整体普及協会 S Sランク
・健康運動指導士
・全米ストレングス&コンディショニング協会認定(NSCA)ストレングス&コンディショニング スペシャリスト(CSCS)

・NSCAパーソナルトレーナー(CPT)
・特定非営利活動法人 日本SAQ協会認定レベル2インストラクター

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