フリーランスがやってはいけない働き方

詰め込み型

フリーランスに転向する理由として「前の職場が合わなかった」「好きな仕事で稼ぎたい」「子供のそばにいたい」とポジティブなものからネガティブなものまで、さまざまあります。いざ、フリーランスになったが、誰しも「期待」と「不安」は抱きます。フリーランスの懸念点は「仕事の有無」「お金の不安定」でしょう。何事も計画と実行が重要で、見切り発車は思わぬ落とし穴があります。そのためにまず、見通しを立て、計画的に仕事を組み立て、少しづつ歩んでいくことをお勧めします。

①詰め込み過ぎは要注意
フリーランスがスタートした時に陥りがちなのが「仕事を詰め込み過ぎること」です。とにかく、仕事が無いと不安な気持ちになります。この詰め込み型はどの世代でも散見しますが、とくに20〜30代前半でしょう。「詰め込み過ぎ」のメリットは稼げることですが、デメリットもあります。まず、パフォーマンスが低下します。たくさん仕事をすることで技能は伸びそうですが、限界を超えるとパフォーマンスは確実に低下します。もちろん限界には個人差がありますので、自身で判断することになります。例えばレッスンの場合、疲労の蓄積から「運動量の低下」「精神の不安定」を招きます。大きく動いているつもりが小さく見えたり、声を出しているが聞こえない。自分では気づかないことに他人は気付きます。また、疲労困憊の結果「頑張って見せる指導」から「頑張らずに動かない指導」になってしまうかもしれません。本人は「こうでもしないとやっていけない」と思うかもしれませんし、たった1本のレッスンと思うかもしれませんが、お客様にとっては貴重で楽しみな1本のレッスンです。その上で、自身がどこまでやれるかも模索することが重要です。とりあえずスタートではなく、「これぐらいならできる」から仕事のスケジューリングをしてくことをお勧めします。

②逆算
1ヶ月にいくらお金が必要なのかを明確にしましょう。「とりあえず稼ぎたい」では挫折の危険性があります。初めはとにかく働こうとするのですが、ゆくゆく仕事のバランスが取れなくなる可能性があります。どのくらいの仕事量で生活費が賄えるのか？から逆算してスケジュールを決定します。そして仕事を進めていく上で、次期のスケジュールをイメージしていきます。実際に働くとわかるのですが「意外と大変」「１年間もこのペースは厳しい」と後悔することもあります。体調を崩すほど働いた結果、長期の休みを取ればその期間は収入がゼロになります。これでは本末転倒です。「生活費」「育児費」「貯金」などあらゆる出費を計算し、逆算して、自身の働き方を固めていきましょう。

③契約期間
仕事内容にもよりますが、ほとんどの仕事に「契約期間」があります。ある一定期間はその仕事を引き受けることになるのです。言い方を変えると「束縛期間」です。いかなる理由があっても、その期間は契約主との仕事を優先することとなります。その仕事を行えなければ、代わりの人「代行」を見つけなくてはなりません。また契約期間中に、他の仕事が舞い込んできたとしても引き受けられないこともあります。「こっちの仕事の方が稼げる」「後々のためにも、この会社の案件を受けた方がいいな」と思っても柔軟に動くことができません。人手不足の問題はフィットネス業界も直面していて、可能な限り「同じ人」に「長い期間」働いてほしいのです。そのため契約期間は短いもので「3ヶ月」、長いもので「1年」とあります。その期間、仕事はいただける安心はありますが、同時に「束縛される期間」であることも忘れてはいけません。契約を交わす際に必ず期間を確認し、今後の仕事への影響も考慮することが重要です。

長距離移動型

フリーランスは会社員と違って多数の企業と仕事をすることもあります。スタジオや小型ジムを自身で経営していない限り、ほとんどのフリーランスが当てはまります。さまざまな場所で仕事ができることは非常に新鮮さがあります。これもフリーランスが求める働き方の1つです。「同じ場所では働きたくない」「いろんな人と出会いたい」と思うからです。変化を楽しめることはフリーランスにとって大切なスキルかもしれません。
フリーランスの給与形態はほとんどが時間給です。働いた分だけ報酬をいただけます。1時間あたりの報酬は3,000〜8,000円くらいでしょうか。1時間8,000円の仕事を1日で5本すれば40,000円。週5日働けば200,000円と一般社員の給料を1週間で達成してしまいます。しかし、時間の使い方によっては報酬に悪影響を及ぼします。時間給のフリーランスはいかに仕事の「効率」を上げていくかが求められるのです。

①移動は少ない方が良い
まずは移動回数と移動時間を減らすことです。移動時間にお金は発生しません。移動が増えれば増えるほど非効率な働き方となります。報酬で判断するのではなく、時給に換算すると効率的かどうかが見えてきます。

例）
共通：両者とも時給5,000円

▶︎Aさんは午前中3本連続で仕事を行います。仕事間の休憩は合計30分です。
5000（円）×3（時間）＝15,000円　時給換算すると15,000（円）÷3.5（時間）＝4,286円（時給）
▶︎Bさんは午前中に1本仕事し、30分かけて移動し1本、また30分かけて移動し1本の仕事を行います。前後の準備時間も含め仕事初めから仕事終わりまで計6時間かかります。5,000（円）×3（時間）＝15,000円　時間換算すると15,000（円）÷6（時間）＝2,500円（時給）

両者とも報酬は15,000円ですが、時給に換算すると約1.7倍もBさんが効率的なことがわかります。また、Aさんであれば、午後に仕事を引き受けることも可能です。しかし、Bさんは仕事を引き受けることができません。結果、上記以上に報酬の差が出てきます。報酬のみにフォーカスするのではなく、時間も有効に活用しましょう。年齢や体力、状況に応じて、資格の取得や私生活への時間の捻出をするためにも、移動を減らすことをお勧めします。

②感染リスク
電車移動が多くなれば、人との接触も多くなります。車や自転車など個人で移動できるものは安全ですが、電車となれば非常に危険です。密閉空間、人との接触はできれば避けた方が良いでしょう。インストラクターやスポーツ選手は激しい運動の前後や疲労から免疫力が低下しやすい。免疫が落ちている時は非常に感染リスクが上がります。感染症であればお客様相手の仕事はできません。体が資本のスポーツ産業従事者であれば、このような点も考慮しておく必要があります。

リスク集中型

個人で仕事を営む場合、働けなくなれば破産するリスクもあります。保証がありませんから当たり前です。この懸念点をいかに小さくできるかが、フリーランスを続ける上で重要となります。また、フリーランスは特化した仕事が多く転職先は限られてしまいます。年齢を重ねればいっそのことです。中長期的な目線で仕事やキャリアを構築しておきましょう。

①契約している場所
まずリスクが集中するのは、働いている場所です。働く場所を1箇所にすることは収益面では効率的です。しかし、その企業が立ち行かなくなれば、自身の仕事へも影響が出てしまいます。なぜなら主導権は企業側にあるからです。新型コロナウイルスの件でも、痛感させられました。日本がどうなってくのか？そして、企業としてどう運営していくのか？これは、企業側に問題があるのではなく、リスクを集中させてしまっている個人の問題なのです。この一件で、フリーランスが複数の仕事をすることが当たり前になるかもしれません。企業の規模や場所、報酬にもよりますが「保険」として複数の企業や場所と契約しておくことがリスクヘッジとなります。また、場所に依存してしまう働き方も注意です。トレーナー業であれば「自宅」「公園」「レンタルスペース」と場所は重要としませんし、対個人なので大人数の集客も必要ありません。しかし、インストラクター業は場所の制限、集客と2つのハードルを越えなくてはなりません。場所に依存しない仕事も1つの選択肢です。

②できる仕事を増やす
「手に職」とはよく言いますが、どこまで1つの仕事を追求し極めるのか。「できる仕事を増やす」とは広義ではありますが、リスクを分散することも含めメリットはあります。まず、職を失うことはありません。ケガをして動けなくなったとします。動くことでしか成立しない仕事であれば、職を失います。少なくともケガを完治するまではお金が発生しません。さらに、年齢の問題もあります。年々、老化することは宿命です。まだ、フィットネス業界が浅いということもあり、ロールモデルが確立されていません。目標とする指標がないのです。年齢を重ねてからも、できる仕事も見つけておかなくてはなりません。いま、パーソナルトレーナーが注目を集めています。1対1でお客様に合ったトレーニングを提供する仕事です。ダイエットやボディメイクの流行、芸能人を起用したCMなどで世の中に認知されるようになりました。誰しも、これまでの生活習慣を変えることや辛いトレーニングは避けたいものです。そこに、トレーナーが定期的に介入することで、大きなモチベーションを与えてくれます。お客様のニーズの多様化、高齢化とトレーナーが活躍できる場所は増えていくと思います。トレーナーは「自分が動く」のではなく、「お客様に動いてもらう」ことがメインです。すなわち、トレーナー自身の負担も少なく、ケガ、産後と現場への早期復帰もさほど難しくありません。男性のイメージが強いトレーナーですが、最近は女性トレーナーも増えています。女性トレーナーは、希望されるお客様も多く非常に需要があります。インストラクターであれば、レッスンの前後でパーソナルトレーニングを指導することで、移動を無くし仕事を効率化できます。また、オンラインで指導も可能です。勉強は必要ですが、始めやすい仕事だと思います。

③時代を読む力
少子高齢化、新型コロナウイルス、生活習慣病、精神疾患と問題は山積みです。また、AIやロボットの進化も著しい。今後、どのような仕事が残り、どのような人材が求められるのか？を予測しておきしょう。人生100年時代と謳われるようになりました。寿命ではなく、健康寿命に貢献できるのはフィットネス業界ではないでしょうか。「予防」という概念を広め、社会貢献に寄与する場所は生き残っていく可能性は高いです。また、食の多様化や運動不足から引き起こされる生活習慣病も年々増加していて、今後も増える見込みです。食と運動に精通した職業はフィットネスのみです。病気を患っている方への指導は、専門知識も要します。「知識」「技術」ともに磨いておきましょう。そして、労働力が減少していく中で、ロボットは必ず必要となります。仕事を奪われるのではなく、人手が不足しているのです。ロボットがレッスンをして、食事指導もしてくれるかもしれません。人間にしかできない「創造」を武器に、代えられない存在になることが大切です。

変化のスピードが早いこの時代に重要なことは、「自身で考える」そして「実行する」ことです。考えるだけでは頭でっかちになってしまいますし、やみくもに実行することに学びはありません。フリーランスは「楽しい仕事」と後世に伝えられるようになればと思います。