次世代は◯◯ができるトレーナーが重宝される!?

コンディショニングなくして成果なし

コンディショニングとは、「調整する」「調節する」という意味です。スポーツ界を中心に使われている言葉で、競技のパフォーマンスを最大限引き出すために、身体的な準備を整えることを指します。まだ馴染みの薄い言葉ですが、スポーツの現場ではよく使われているワードです。準備運動と捉えてもらっていいかと思います。
トレーニングと聞くと、激しい運動や重りを使用するイメージですが、決してそれだけではありません。最終的には重りを使用しますが、そこにいたるまでに「重さに耐えられる体」「正しく動ける体」をコンディショニングで作り上げるのです。

①コンディショニングとダイエットの関係性

体を調整することは一般人にこそ大切です。なぜなら、ほとんどのお客様で「動けない体」だからです。スポーツジムにはダイエットのお客様がたくさん来られます。広告やCMでもダイエットのイメージが強いかと思います。ダイエット＝「食事制限」と思われがちですが、現場ではウエイトトレーニングもしっかり行います。ウエイトトレーニングを行うことで、「筋肉量が増加し基礎代謝が上がる」「筋力が付き日常生活の質が上がる」「ダイエットホルモンを活性化する」など、効果は挙げきれませんが間違いなくダイエットを促進してくれます。しかし、これらの効果を引き出すためには「動ける体」でなければならないのです。例えば、スクワットを行う際に背中が丸まってしまうと、腰を痛め下半身の筋肉には刺激が入りません。巻き肩でベンチプレスを行えば、肩の関節を痛め胸の筋肉を使えません。猫背の場合、呼吸が浅くなり有酸素運動の脂肪燃焼効率が低下してしまいます。体を整えることで、ダイエットの成功率が上がるのです。現場では、体を根本的に改善できるトレーナーが求められています。

②高齢者はトレーニングが必要

高齢者人口は年々増しています。スポーツジムも高齢化が進んでいて、平均年齢は上昇の一途をたどっています。「人の手を借りず、自分の体は自分で守る」と、日々運動に励んでいます。人気なカテゴリは「ヨガ」「プール」「ウォーキングマシン」で、一般的に健康に寄与すると言われている運動です。どれも素晴らしい効果をもたらしてくれるのですが、弱点があります。それは「筋力の低下を抑えられない」ということです。
ヨガは柔軟性に優れたプログラムですが、柔軟性が向上することと健康は必ずしも直結しません。例えば、歩くという動作は足を開き、腕を振り、体を安定させることが重要となります。言い換えれば安定していないとキレイに歩くことは不可能なのです。筋力があるからこそ、関節や体幹が安定し自然な歩行が身に付きます。柔軟であっても体を支える筋力がなければ正しい歩行は行えません。ヨガで柔軟性やバランス能力を高め、そこに筋力トレーニングを加えることでよりお客様の理想の体に近づけます。
次にプールはどうでしょう。「お医者に勧められた」と始める方がいますが、そこには勧められる理由があります。それは体に負担が少ないからです。プールには浮力という力が存在し、胸まで浸かれば陸の体重に比べて1/3程度となります。怪我や病気後、安全に再開できる運動として医者から勧められるのです。安全に動けるという点では素晴らしいのですが、私たち人間は陸で生活しています。すなわち、陸で動けることがゴールなのです。階段で膝が痛いのであれば、階段に耐えられる筋力を付けなくてはお客様が求めるゴールにはたどり着けません。やはり、筋力トレーニングが必要となります。トレーナーは、運動効果だけでなく、弱点も考慮してプログラムを作成するのです。
そして、筋力トレーニングを正しく行うためには「コンディショニング」が必要です。長年の猫背や疾患を抱えている高齢者は、関節が動かない、筋肉が硬い、やってはいけない動きが多数存在します。トレーナーが細く評価し、各所の不具合を調整し、運動効果を最大限引き出してあげられると良いでしょう。

③猫背がもたらす影響 

猫背姿勢は高齢者ばかりではありません。パソコンやスマートフォンの普及で若年層でも猫背の人は増えています。猫背がもたらす影響は痛みや慢性的な肩こりだけではありません。まず、見た目の問題です。営業マンが猫背だと自信がなさそうに見えますし、女性であればバストが下がって見えます。せっかくダイエットに成功したとしても、非常にもったいないです。二つ目は精神的な影響です。ある論文によると、精神的不調感のある学生のうち男性で44.1%、女性で88.9%が肩こりあるいは猫背が認められ、肩こりと猫背の両方がある学生では男性で75.0%、女性で63.2%に精神的不調感があると認められたとあります。日本では精神疾患の方が増えていて、このような姿勢の影響があるのかもしれません。パーソナルトレーニング後のお客様はとても清々しい表情をしています。中には「生活に張りが出た」「落ち込まなくなった」とおっしゃる方もいます。トレーニングの効果は内面にも好影響をもたらすのです。
また、肩こりのほとんどは猫背などの不良姿勢ですが、意識で改善させることは難しいと思います。そもそも仕事中、日常生活で楽な姿勢が現在の猫背姿勢だからです。そして、猫背姿勢に合わせて、筋肉は劣り、偏ってくるので本人の意識のみでは改善にいたりません。
今後、ダイエットのみならず姿勢改善や肩こり改善にも対処できることが、必須となるでしょう。

触れる技術の可能性

トレーナーはストップウォッチを持って、回数を数えて、追い込むだけが仕事ではありません。むしろ、そのようなトレーナーはほとんど見かけなくなりました。

①磨くべきは触れること
経験を積むことで、いろんな感覚が身に付いてきます。それは「体の原因究明ができる目」「円滑にトレーニングを行うためのコミュニケーション力」「触れる感触」など研ぎ澄まされていきます。そのうえで、とくに磨くべきは「触れる技術」です。パーソナルトレーニングとは、マンツーマンですからマンツーマンである理由が必要です。お客様がひとりでも行えるトレーニング内容では、パーソナルトレーニングの意味がありません。もちろんお客様ひとりで行えるトレーニングもご案内しますが、せっかくマンツーマンでお金を払い運動をするのであれば、二人で成立する内容でなければなりません。例えば、ストレッチをひとりで行う場合、伸ばしたいところが伸びなかったり、伸ばし方が悪ければケガをすることもあります。トレーナーが伸ばすことで、目的に合った筋肉を、適切な手法でストレスなく伸ばすことができます。これはトレーナー がいなければ成立しません。また、限界に達する重さを扱う場合、トレーナー がいることでお客様は安心して限界の重さに挑戦することができます。しかし、器具を使用するトレーニングは慣れてくると、後々トレーナー の必要性が薄まるかもしれません。なぜなら、器具があればトレーニングが成立してしまうからです。「自分ひとりでできる」と感じたら誰でもひとりで行います。ストレッチやコンディショニングのように「ひとりではここまでできない」と思える手法がお客様の継続に繋がります。すなわち「触れる技術」ということです。トレーニング前のコンディショニングやトレーニング後のストレッチのような「触れる技術」を磨くことで、お客様と長いお付き合いが保てるようになります。

②代えがきかないトレーナー
最近、トレーナー 養成所が非常に増えました。これはトレーナー を志望する方が増えたからです。同業者が増えるということは、現場では競い合うことになります。そこで重要となるのが「あなたにしかできない」ことを増やすことです。マシンを説明することや回数を数えることは、アルバイトや新人トレーナーにもできることです。そこで勝負すると、「無料」というサービスに負けます。例えば総合フィットネスクラブの場合は、常駐のアルバイトスタッフがいますが、無料でマシンの使い方や簡単な食事のアドバイスをしてくれます。お金をいただくトレーナーは最低限このレベルは超えなければなりません。
また、巷には多くの運動メソッド、食事メソッドがあります。メソッドも真新しいものであればうまくいくかもしれませんが、時間とともに価値が下がっていきます。メソッドとは、再現性が高く効果を出せるので使い勝手は良いです。しかし、誰にでもできるというデメリットもあります。現場に同じメソッドを持っているトレーナー が多ければそれだけあなたの価値が下がり、「あなたでなくてもやってもらえる」ということになります。
今後トレーナー が増えてく中で、「あなたにしかできない」を構築していくことが重要となるでしょう。

③ロボットにはできないこと
ものがインターネットで繋がり、世の中が便利になりました。「ウェアラブル」「アプリ」「運動機器」とさまざまな方法で運動を行うことができるようになりました。近い将来、人間の仕事がロボットに奪われると耳にしますが、トレーナー業はどうでしょうか。まず、ロボットは計算やデータの処理が得意です。過去のデータと照らし合わせ最適解を導き出します。単純な栄養指導や運動であれば、アプリやロボットで事足ります。では人間にできることとはなんでしょうか。一つは気持ちを汲み取ることです。その日の気分を感じ取り、会話や運動を選択することはロボットにできません。淡々とセッションをこなすのではなく、お客様の小さな変化にも気付けるようにしましょう。
二つ目は「感覚」です。人間は無意識に、生活したり仕事したりしていることがほとんどです。しかし、普段と違えば異変に気付くことができます。「今日はなんとなく筋肉が硬い」と触って感じることがあります。見た目には分かりませんが、これまでの経験がその違和感を見つけるのです。「見て」「聞いて」「触れて」感じたことを、お客様にお伝えすると当たっていることがほとんどです。とくに「触れる」という感覚は実感しやすいかもしれません。マッサージ機と人の手では全く違います。この絶妙な感覚こそロボットには代えがたい技術でしょう。また、素人のマッサージとプロのマッサージも違います。同じ施術でも、ほとんどの方がプロにお金を払うでしょう。
たくさん触れて感覚を磨くことでロボットに代えられない存在になります。

手に職とはこういうこと

将来的に、継続可能でどのような変化にも適応できる働き方は大切です。男性であれば家族を養うことになりますし、女性であれば出産や育児に直面します。個々のフェーズに合った「働き方」と「お金」は両者とも満たされなければなりません。「手に職をつけたほうが良い」と言われますが、それは資格なのか、技術なのか、それともどちらとも必要なのか。明確な答えはありません。
〇〇専門家とはどの業界にも存在しますが、パーソナルトレーナーは専門家と呼べるのでしょうか。国家資格を取得してトレーナーになる方もいますし、インターネット受講のみでトレーナーになる方もいます。どちらもパーソナルトレーナー であることは間違いありません。そこで、重要なことは自覚です。プロとして仕事と向き合っているということです。「どんな仕事をされていますか？」という問いに対して、ハッキリと「〇〇です」とお伝えできることがプロだと思います。自分でプロと言えないようであれば、努力するしかありません。また、自信を示せなければ仕事を任せる側も不安になります。トレーナーは「体の専門家」であり、「運動指導のプロ」です。その自覚を持てるよう日々の努力を継続することが手に職と言えるのかもしれません。