トレーニング指導より必要なカウンセリングの極意。 皆さんは指導に入る前のカウンセリングを、どこまで大切にできているでしょうか。パーソナルトレーナーとして成功する上で、「カウンセリング」に力をいれる事は、とても重要なファクターです。 もちろん、トレーニングの指導力や解剖学・栄養学・バイオメカニクスなどの知識を学ぶ事も重要ですが、それよりも前に、自分にお客様が付かなければ、何も意味がないですよね?パーソナルトレーナーのカウンセリングは、商社マンの営業と同じです。 ですが、パーソナルトレーナーの営業はというのは、飛び込み営業ではなく興味を持って時間を割いて来てくれるお客様に向けた営業ですよね?つまり、成約率は100%に近くないとかなりまずいです。 今回は、カウンセリングに不安があるトレーナーに向けた、カウンセリングの極意を解説させて頂きます。
1. カウンセリングとは?
皆さんはカウンセリングの意味をご存知ですか?カウンセリングとは、お客様が抱えるお悩みや目標、ニーズをお聴きするプロセスの事を指します。つまり、自社のサービスや実績を過去の栄光のように語る時間ではありません。
どれだけお客様の不案要素を取り除けるのか?どれだけお客様に安心感や期待感を与えられるのか?常にお客様の声に耳を傾ける必要があるのです。また、カウンセリングをしっかり行う事によって、お客様の人物像が想像できます。
・食事制限で挫折した経験がある
・家族構成
・仕事の時間
・数か月後にイベントがある
・人に体型を指摘されてコンプレックスを抱いている
カウンセリングは、少し聞くだけでも数多くの情報を得る事が出来ます。パーソナルトレーナーは、限られたカウンセリングの時間で一つでも多くの情報を引き出す必要がありますよね。逆にお客様の情報を知らない状態で、トレーニングを始めたとしても、それはパーソナルトレーナーの知識の押し付けになってしまいます。今後に良い関係性を築いていき、リピートして頂くためにも、お客様の声に耳を傾けて、適切なプログラムを提供するように心掛けていきましょう。
2. 成功するカウンセリングのポイント
■ アイスブレイク
この言葉を聞いたことがありますでしょうか。皆さんも経験があると思いますが、初めての場所や初めての人に会うときは緊張しますよね。うまく話せるかな、気まずくならないかな、など不安はたくさんです。特に身体を変えるために訪れるパーソナルジムであれば尚更。
トレーナーは厳しい人じゃないかな、怖い人じゃないかな、などお客様はいろんな思いがあってジム来館されます。初対面のお客様の場合、最初の緊張した空気を壊す事はとても重要です。お互いの緊張をほぐすトークから始めて、そこからカウンセリングに入ります。そこで、お客様にも必ず質問を投げかけるようにしましょう。「道には迷いませんでしたか?」「パーソナルトレーニングジムは始めてですか?」「どのように店舗を知って頂けましたか?」などの質問をすると、顧客情報を集める事にも繋がります。また、お客様によっては「最初は皆さん緊張されるんですよ(笑)ちなみに私も緊張しやすいので楽しくお話出来ればと思います(笑)」などの声かけをして頂くのもいいでしょう。
■ ヒアリング
先程申し上げた通り、カウンセリングはお客様のお悩みや目標を聞き出す、重要なプロセスです。そこで、必要になってくるのがヒアリングです。
ヒアリングは、カウンセリングの成功要素の90%を占めています。また、カウンセリングのみならず。日々のセッションやプライベートでも必要なスキルだと思います。人は基本的に自分が一番好きで、一番興味を抱いております。「そんなことない」という方もいるかと思いますが、実は人は、他人の事についてはあまり興味がないのです。
例えば、集合写真などはどうでしょうか?集合写真を見た際に誰の顔を最初に見たりするでしょうか?おそらく多くの人は自分の顔を見てしまいませんか?自分の写真写りが良い写真は素敵な写真になり、インスタグラムやフェイスブックで投稿。自分の写真写りが悪い写真は、ゴミ箱行きになるかと思います。「私の○○が嫌い、私の○○を直したい」など周りに言う方もいます。一見、自分の事が嫌いな言い方をしていますが、実は自分しか見ていないのです。人は、自分に興味をもってくれた方に興味を持ちます。つまり、パーソナルトレーニングジムに来て頂いたお客様も、自社のサービスばかり話すトレーナーよりも真摯に話を聞いてくれるトレーナーに興味を持ってくれます。
■ 質問力
ただお客様の話を聞くだけでは、カウンセリングは成功しないでしょう。お客様の話を引き出すには、質問力が必要不可欠なのです。下記に悪い質問の仕方を並べてみます。
・食事はどんな感じですか?
・目標はなんですか?
このような形ですぐに答えを求めようとするのは、悪い質問の仕方です。結果的にお客様は「私の話を聞こうとしているのかな?」と思ってしまいます。そうではなく、相手の価値観や経験談などの話を聴いて、エピソードを話して頂くようにしましょう。例えば、
・過去にダイエットはご経験されていますか?どのようなダイエットでしたか?
・体型が気になったのは、いつ頃からでしたか?
・パーソナルトレーニングは、どのような印象をお持ちでしたか?
上記の様な質問をすると、お客様も自分の話をしやすくなります。一方的な質問でコミュニケーションをとってしまうと、相手との会話のキャッチボールが困難になり、まるで圧迫面接を受けているのではないかとお客様も感じてしまう恐れがあるので注意しましょう。
■ プレゼンテーション
お客様のお話を聞いた上で、ここからはトレーナーの説明の時間です。先程、申し上げた通り、人は自分の話を聴いてくれた人に興味を持つ特徴があります。ヒアリングと質問を完璧に行ったのであれば、お客様はトレーナーの話に耳を傾けてくれます。プレゼンテーションの時に気を付けて頂きたいのが【テンプレのような説明をしない】という事です。人は、感情で左右される生き物です。自社のシステムの話ばかりではなく、そこにはどんな思いがあるのか?自分の強みはどこなのか?自分であれば、お客様のどのような所を改善できるのか?そのような事をきっちり伝えられると良いですね。
「現状、多くのトレーニングメソッドやサプリメントの情報がある中で、どのようなトレーニングをすればいいのか分からないですよね。過去の自分もその中の一人でした。そこで、東京の最先端のトレーニングメソッドや解剖学・栄養学の知識を取り入れて実践する事によって、自分の体がみるみる変わっていく体験がありました。(ビフォーアフターを見せるのも効果的)この経験を生かして、一人でも多くダイエットやトレーニングに困っている方々の役に立てればと思いました。私であれば、○○様のお悩みを解決できるかと思います。」
上記のように自分の熱意も込めて相手に響く言葉を投げかけるようにしましょう。響く言葉を投げかける為にも、事前のヒアリングや質問をきっちり行えると良いですね。
■ クロージング
ここまでしっかりと行えれば、お客様は契約するものだと考えてくださります。そこで、トレーナーから「私であれば、○○様が仰っていたお悩みを解決する事が出来ますが、さらにこうして欲しいなどのご要望がございましたら、お気軽に仰ってください。」と最後までお客様に寄り添う姿勢を見せられると良いですね。パーソナルトレーニングは、高単価なサービスなので、お客様の即決はほぼあり得ません。最後まで、お客様のお悩みに寄り添う姿勢を見せていきましょう。
3. 絶対にやってはいけないカウンセリングの仕方
他社を落とすような言い方をする
「あそこのパーソナルジムより、自社の方が優れている!」「あそこのパーソナルジムはここが良くないですよ!」などの他をパーソナルジムを批判するような言い方をしてしまうとお客様からの印象はよくありません。お客様から聞かれたとしても、「○○ジムは健康に特化したジムですよ」など、当たり障りのない良い方にしましょう。
自社の話ばかりする
先程述べたように、カウンセリングは自社のサービスを語る自慢大会ではありません。お客様も引いてしまって結果、成約に至らないケースがかなり多いので注意しましょう。
目を合わせない
カウンセリングの際に、メモを取るトレーナーは多いかと思います。メモを取る事自体は悪くないのですが、メモに注力し過ぎてお客様の目を見て話をしないということは良くないです。
一問一答のような会話
トレーナー側が質問したのにも関わらず、「そうなのですね。次の質問なのですが」と深堀りをせず、どんどん次の質問をしてしまうやり方は良くないです。お客様側も「自分の話に興味がないのかな?」と感じてしまうので注意をしましょう。
雑談がない
雑談は円滑にコミュニケーションをする為の重要なツールになります。いきなり本題の話になってしまうと相手も引いてしまい成約まで至らなくなってしまう恐れがあります。まずは、雑談から入り相手の緊張感を取って、その後に本題のカウンセリングに移行されると良いですね。
押し売りをする
相手が迷っているのにも関わらず、押し売りをするやり方はやめましょう。基本的には、パーソナルトレーニングは高単価なサービスです。それに対してお客様が悩まれるという事は当然です。迷っているのであれば、どこに迷いがあるのか?お客様の気持ちに真摯に寄り添って対応するようにしましょう。
4. 成約する事が全てではない。その後のフォローも忘れずに
カウンセリングで成約をする事はゴールではありません。あくまでスタート地点にたっただけです。お客様からしたらカウンセリング成約後というのは、希望と期待を抱いています。「○○トレーナーの指導を受ければ必ず私の体は変化する」「これだけ高いお金を払ったのであれば、痩せて当然」とお客様は思います。期待を抱いている分、お客様はトレーナー以上にトレーナーが話した言葉を覚えています。なので、トレーナーは自分の言葉に責任を持たなければなりません。
ただ、ダイエットは人間の体を扱うので、このような指導をすれば必ず結果をだせるという保証はありません。なので、トレーナーはお客様のお悩みや目標に寄り添ったコミュニケーションを取らないといけません。食事指導においても自炊をしない方に自炊を指導しても意味がないです。外食が多ければ、近隣でダイエット中にオススメな飲食店を紹介したり、コンビニ食が多ければ、ダイエット中でも食べられるコンビニ食をオススメしたりとその人によってアプローチ方法を変える必要があります。また、体重が減っていればしっかり褒める事や体重が停滞していればどこに原因があるのかをヒアリングをするといった、常にお客様に寄り添った対応をしましょう。それがリピート率にも繋がり、そのトレーナーのファンになってくれるでしょう。
いかがでしたか?パーソナルトレーナーというのは、究極のサービス業です。
・カウンセリング
・一対一の空間
・運動・食事の指導
・継続して頂くためのアプローチ
決して、簡単な仕事ではないかと思います。しかし、日々のお客様とのコミュニケーションをしっかり行い、その上で結果を出す事ができれば、お客様にとってかけがえのない存在になります。
「○○トレーナーのおかげで自分に自身が持てました!」 「ダイエットが楽しくなりました!」 「自分の事が好きになりました!」
このようなお言葉を頂くのがパーソナルトレーナーとしての最大の喜びではないでしょうか?一人一人のお客様の性別・年齢・職業・性格は十人十色で様々なので、トレーナー自身がお客様一人一人に興味を持ち、「○○さんだったら、このような言葉を投げかけたら喜ぶだろうな」と常にお客様の立場に立って行動しましょう。
パーソナルトレーナーである以上、お客様から【尊敬される存在】になりましょう。
高月宏和(Hirokazu Takatsuki)
スポーツ系の専門学校を卒業後、J1リーグに所属する静岡の清水エスパルスに入社。一般の方からプロ選手までのトレーニング指導を5年経験したのち、パーソナルトレーナーとして独立。独立から7ヶ月後にパーソナルジム『BodyBrand』を設立。主に一般の方の『美姿勢づくり』『ダイエット』をサポートするパーソナルジムとして定評があり、現在は5名のトレーナーと活動中。